リース会計を攻略しよう❗

リース会計

資産の売買とみなす❗

いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。

中小企業診断士試験の攻略法について、【中小企業診断士試験の攻略法】にて全般的にまとめていますので、是非そちらもご参照ください。

さて、今回は、こちらも財務会計に関する難解な論点の一つであるリース会計について、どのように理解すべきかをご説明したいと思います❗

(財務会計の基礎となる複式簿記については、【複式簿記の基本を理解しよう❗】もご参照ください。
その他、財務会計に関しては、コチラもご覧いただければと思います。)

リース会計とは何なのか

さて、リース会計とは何でしょうか。

何となくですが、リース取引に関係するんだろうな、ということは直感的にわかりますよね。

リース取引というのは、ある資産(例えば工場の機械設備とか、システム用のサーバーとか)を、自社で所有するのではなく、リース会社が所有する資産を借り受けて、利用料としてリース料を支払いながらその資産を利用していく、という取引です。

なぜ、自社で資産を保有するのではなく、借りて利用するのかというと、主に2つの理由があります。

一つ目の理由は、

資産の購入と所有に伴うリスクとコストを回避できること

です。

巨額の資産を自社で選定して購入するのはリスクを伴いますし、実際のところ何年間くらい使用に耐えられるのかも心配ですよね。途中で改修したりアップグレードしたりするにも人手と知識とノウハウが必要です。こうした製品知識と改修やアップグレードに関するノウハウを持ち、さらに豊富な製品ラインアップまで持っている会社から借りることで、リスクと人的コストを回避することができます。

もう一つの理由として(こちらの方がメインの理由であることが多いように思いますが)、

初期投資額を低減できる

ということが挙げられます。

巨額の資産を購入しようと思ったら、そのための資金を調達が必要になります。銀行からの借入金で対応しようとすると、「その資産の収益性は…。」とか、「資金繰りと返済計画は…。」とか言われて、財務分析されて、いろいろと面倒ですよね。
それで審査を通れば良いですけど、通らなかったら結局その資産の購入を断念しないといけません。

しかし、リース取引であれば、その資産の利用に応じて(多くは期間均等割りで)一定額を平準化して支払っていけば良いため、購入初期に多額の資金を用意する必要がありません
特に、巨額の借入をするハードルが高い中小企業にとっては非常に大きな利点になりますね。

一方、これに伴うデメリットとして、リース会社に利息に相当する額も含めて支払う必要があるため、資産を購入した場合と比べると支払総額は膨れ上がることになります。

ファイナンスリース

さて、そんなリース取引ですが、取引形態の違いによって大きく、

  • ファイナンスリース取引
  • オペレーティングリース取引

の2つに分類されます。

ファイナンスリース取引とは、実質的にリース対象の資産を購入しているのと同等とみなされるリース取引です。例えば、リース期間を通じて最終的に支払うことになるリース料総額が、その資産を購入した場合の代金をほぼカバーできるほどの額(判定基準の目安として購入代金の90%以上)であり、かつ途中解約ができないなど、一定の条件に当てはまれば、契約上は資産の売買ではなくても、会計上は資産の売買と同等の取引であると考えるということです。

これに対して、オペレーティングリース取引は、ファイナンスリース取引に該当しないリース取引で、要するに、本当にただただ賃借料を支払って借りているだけ、という取引です。

これら2つのリース取引のうち、オペレーティングリース取引の会計処理は、シンプルに、リース料を支払った時に、それを「リース料」として費用処理するだけです。
いやぁ、シンプルですね。もう、全部これで処理したら良いのに😵と思うくらいに。

それに引き換え、ファイナンスリース取引の会計処理は、一筋縄ではいきません。

と、いうことで、いまから2段階に分けて、会計処理のポイントを紹介していきます❗

要するに資産を分割で買っている❗

ファイナンスリース取引は、資産を売買したものとみなす、と言いました。

例として、リース契約(ここでは、仮に、リース期間5年リース料年額120万円(リース料総額600万円)月払い(リース料月額10万円)としましょう。)を締結し、リース対象資産が手元にやってきて、稼働し始めたところを創造してみてください。

実際にはキャッシュアウトはまだ発生していないか、初回の月額10万円を支払っただけの状態で、これから毎月10万円ずつの支払が発生していくだけです。

(もしこれがオペレーティングリース取引ならば、毎月の支払時に、
(借方)リース料10万円/(貸方)現金10万円
と仕訳するだけです。)

では、これを資産の売買と捉えるとどうなるか。

契約締結時に、総額600万円の資産(例えば機械設備だったとします)を購入したものと考えると、会計処理としては次のような仕訳が切られることになりますね。

借方 貸方
機械設備 600万円 未払金 600万円

しかし、実際には600万円分の請求を受けたわけではないので、貸方の科目を未払金としてしまうと、本当に請求を受けた支払債務なのかリース会計上認識するだけの負債科目なのか区別がつかなくなってしまいます。資産にしても、本当に購入して自社で所有する資産なのかリース会計上認識するだけの資産なのか見分けがつきません。

そこで、これらの資産と負債が、リース会計により認識したものであることを明確に示すために、リース会計特有の勘定を用いて、次のように仕訳をすることになります。

借方 貸方
リース資産 600万円 リース債務 600万円

つまり、リース会計では、リース資産リース債務という特殊な科目が出てくるものの、その本質は、借方に資産を計上し、貸方に多額の未払金(的な負債)を計上しているということなんですね。
ツケで資産を購入しているということです。

で、このツケの支払は、毎月10万円ずつ5年間にわたって行っていくわけで、要するに、資産を分割払いで購入しているのと同じように会計処理を行うのがファイナンスリースのリース会計ということです。

リース料支払と減価償却

資産と負債の計上は、一旦、上のとおりですが、費用計上はどうするのでしょうか。

毎月のリース料支払10万円がやっぱりそのまま費用になるのでしょうか。

そうではありません。リース料の支払は単に購入対価を分割払いしているだけですから、仕訳としては以下のようになります。

借方 貸方
リース債務 10万円 現金 10万円

では、何が費用として計上されるのかというと、ファイナンスリース取引は、資産を分割払いで購入したものとみなすわけですから、購入した資産の費用化といえば、そう、減価償却ですね。

では、耐用年数はどう考えるのでしょうか。

ここで、ファイナンスリース取引を、さらに2つに区分して考えることになります。

1つは、所有権移転ファイナンスリースで、リース契約終了後に、対象資産の所有権が手に入るタイプのリース取引です。
この場合は、正に資産を分割で購入したという取引と極めて近しいわけですから、耐用年数も減価償却方法も、自社所有資産と同じ方法で行うことになります。自社が定額法なら定額法、定率法なら定率法で処理するということです。

これに対して、所有権移転外ファイナンスリースは、契約終了時に自動的にはその資産を所有できないタイプのリース取引です。
この場合、耐用年数はリース期間になり、定額法で減価償却していくという処理を行うことになります。

なので、毎月の減価償却費計上の仕訳としては、

借方 貸方
減価償却費 10万円 リース資産減価償却費累計額 10万円

一般的には、リース料支払は月々定額であることが多いので、リース料支払額と減価償却費計上額が同じになることが多いのですが、支払があったから費用計上するという考え方ではない、ということに注意が必要です。飽くまで費用として計上するのは減価償却費であって、リース料支払は、分割払いで未払金であるところのリース債務を支払っていっているキャッシュの出入りである、と、切り分けて捉えておく必要があります。

と、ここまでが1段階目でした。

資産を分割支払で購入したものとみなす、ということについては何となくイメージできましたでしょうか。

利息費用という魔物

2段階目に入りましょう。

上でのリース取引のデメリットの説明で触れたとおり、リース会社はタダで分割払いという恩恵を提供してくれているわけではなく、当然、支払を分割することに伴う利息相当費用をリース料に含めて請求してくるわけです。

これは、会計上、無視して良さそうでしょうか。

良いわけないですね❗

ということで、リース料総額を、対象資産の対価相当額と利息相当額とに分割し、資産の対価部分については1段階目で説明したとおりの処理を行いつつ、利息相当部分については、支払時に支払利息として処理していくことになるのです。

例えば、上の例で、リース料総額600万円のうち、資産本体の対価部分が540万円利息相当額部分が60万円だったとします。
すると、まず最初のリース資産とリース債務の計上時の仕訳は、

借方 貸方
リース資産 540万円 リース債務 540万円

となります。
資産の購入とみなす本体部分の価格が540万円なのですから、資産計上するのはリース料総額の600万円ではなくて、540万円になるということです。

そして、このタイミングでは、利息相当の60万円については処理しません。
リース料として利息相当分を含めた金額を支払う正にその時点で、新たに支払利息(営業外費用)が発生するとみなすのです。

実際には、リース債務の残高に一定の利率を掛けることで毎回の10万円のうちいくらが利息相当分なのか、を計算していく方法が原則的なのですが、ここでは簡便に、毎月の10万円の支払のうち、1万円が利息相当額だと仮定しましょう。そうすると、毎月の支払時の仕訳は以下のとおりになります。

借方 貸方
リース債務 9万円 現金 10万円
支払利息 1万円

これが利息法です。

ちなみに、本体価格が540万円になりましたので、減価償却費の計上は、

借方 貸方
減価償却費 9万円 リース資産減価償却費累計額 9万円

となります。

まとめ

と、いうことで、今回は、財務会計における難解論点の一つであるリース会計について、ご説明してきました。

オペレーティングリース取引は、リース料支払時に支払った分をそのまま費用として計上するだけの簡単な処理でしたが、ファイナンスリース取引が曲者でした。

ポイントは、

  • 資産を分割支払で購入したと考える
  • 費用は減価償却費として計上する
  • リース料支払は、分割支払によってリース債務を減少させていく処理とする
  • リース料総額と毎回のリース料支払額に含まれる利息相当額を区別し、支払時に支払利息として処理する

ということでした。

少しずつ一次試験の足音がしてくる季節になりましたが、勉強のペースと健康の両方を維持することが特に重要な時期かと思います。皆様のご健闘を願っております。

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