SBGの利益とトヨタの利益は全くの別モノ⁉️
兆超えの利益
いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。
中小企業診断士試験の攻略法について、【中小企業診断士試験の攻略法】にて全般的にまとめていますので、是非そちらもご参照ください。
今回は、続々と発表されつつある2021年3月期決算の中でも、特に目を引く2社、SoftBankグループ(SBG)とトヨタ自動車の決算について、同じように多額の利益を計上したこの2社の利益の質の違いをお話ししていきたいと思います。
中小企業診断士を目指す方にとっても、経営戦略論や財務会計の知脳ミソを刺激する内容の記事として、お読みいただければと思います。
SBGとトヨタの決算
2020年度決算の発表がいよいよ盛んですが、そんな中でも、今回、SBGの発表した決算内容がビッグニュースとなっています。
(ニュース記事を貼っておきます。【ソフトバンクG決算 最終利益5兆円 グーグル超え日本企業で過去最高】(産経新聞))
最終利益が約5兆円ということで、日本の企業として過去最高の利益額であり、米国IT大手のグーグル(の親会社の「アルファベット」)やMicrosoftを上回る利益を上げたということで、大きなドヨメキとなりました。
一方、同日に決算発表したトヨタ自動車もまた、約2.2兆円という巨額の最終利益を計上し、こちらも同じくドヨメキを呼んでおります。
(こちらもニュース記事を貼っておきます。【トヨタ最終利益、10.3%増の2兆2452億円…21年3月期】(読売新聞))
いずれも日本を代表する巨大企業であり、コロナ禍に見舞われた2020年度に巨額の利益を計上したという点で同じように見えますが、ニュースのドヨメキと共に、「SBGの利益とトヨタの利益を同列に論じてはいけない」という意見も多く飛び交っています。
一体、どういうことでしょうか。
と、いうことで、今回は、この2社の利益は何が違うのか、を考えることで見えてくる、それぞれのビジョンや戦略について、ご説明していきたいと思います。
まずは、一般的な事業利益のイメージと合致するトヨタ自動車から説明していきましょう❗
トヨタの利益
トヨタ自動車の2020年度の連結最終利益は、上述のとおり2.2兆円でした❗
もちろんとんでもない規模の凄まじい成果です。
コロナ禍で上半期の販売が落ち込み、2020年5月時点の見通しでは営業利益5000億円としつつも(それでもコロナの影響が全く読めなかったあの時期に敢えて利益計上見込を世に公言するのはさすがでしたが)、ふたを開けてみると、なんと、営業利益が2兆1977億円、最終利益は2兆2452億円という圧倒的な上振れです。
別に下半期が磐石の状況だったわけではありません。
海外を中心に需要が持ち直してはいたものの、世界的な半導体不足や、東北での地震、仕入先の火災被害など、供給能力の維持にとって試練となる事象が様々に発生したにもかかわらず、この圧倒的な利益を叩き出すところがトヨタのトヨタたる所以です❗
同社によると、「固定費を含む総原価改善によって、損益分岐台数をしっかり落とせてきた」「サプライチェーンについても(中略)サプライヤーと減災に向けた取り組み、在庫の保有、代替品の評価の効率化など、ずっと努力してきた」とのこと。
要するにトラブルに対応できるように供給能力の耐性を高めつつ、販売台数が減っても利益を出せるような筋肉質な業務体制を構築してきた、ということですね。
隙がない❗
と、いうことで、まさに経営管理の見本のような同社ですが、そろそろこの記事における本題に入ります。
経営のしなやかさと力強さが圧倒的であることを一旦議論の脇に置いて考えた時に、その利益発生の源泉もまた比類ないかというと、ビジネスモデルそのものはオーソドックスです。
キチッとしたマーケティング戦略で売れるモノを作る能力と、それを顧客に届ける能力があり、それらを利益を生み出せるコスト水準で実現できるだけのオペレーション能力を持っていることによって、顧客への売上高を源泉とする利益を生み出しているのです❗
もちろん売上回収期間がありますし、費用の中には減価償却費やら退職給付費用やらのノンキャッシュ費用も含まれていたりするのはしますが、基本的には手元にキャッシュが貯まる利益ですよね。
この、利益発生のしくみとキャッシュになる利益であるという性質はとても一般的ですし、イメージもしやすいですよね。
ちなみに、トヨタがそのキャッシュを元手に何をするのかというと、先日の決算と同時に発表された今後の電動車の積極的な展開や、日本中から羨望の眼差しが向けられるウーブンシティ(トヨタがロボットやAI技術を駆使した実験都市として静岡県裾野市に開発中の未来都市)などに資源配分していくんですよね。いや、本当にすごいです❗
ところが、SBGの利益の中身はこれとは大きく異なります❗
SBGの利益
SBGの今回の決算発表の内容を見てみると、利益の源泉が、投資利益であることがわかります。
孫正義代表取締役が率いるソフトバンクグループ株式会社は、投資会社なのですね。
そして、今回の投資利益の多くは、未実現の評価益と書かれています。
つまり、今売却すればそれだけの売却益がでますよ❗という評価によって、決算上の利益が多額に計上されているということです。
なので、この4兆9880億円の最終利益のほとんどは、トヨタ自動車(や他の一般的な事業会社)と違って、手元にキャッシュとして残りません。
それだけでなく、SBGが株式を保有する投資先企業の市場評価が極めて高かったことによる利益であったということは、それら投資先の市場評価が下がれば、今回の利益が消しとんでしまうどころか、大赤字に至る可能性も孕んだ性質のものになります。
トヨタ自動車との違いがわかっていただけましたでしょうか。
トヨタの利益は、基本的にはトヨタの手元に残って次なる投資に回したりできるトヨタのものですが、SBGの利益は2021年3月時点ではこういう評価だったという数字であって、5兆円の目減りしない資産を獲得できた❗という性質のものではないのです。
これが、トヨタの利益とSBGの利益が同列に論じてはいけないとされる所以です。
SBGのビジョン
では、
という理解で良いのでしょうか。
確かにトヨタの稼ぎだした利益は磐石なものです。
一方、SBGの2020年度の利益約5兆円は、株式市場の状況等に応じても変動しますので、2021年度には消し飛んでいる可能性もなくはありません。
その場合、会計データとしての経営成績としては、(キャッシュが手元に残っているトヨタと比べて)利益の山と損失の谷を経た結果何も残っていない、という状況になってしまいます。
それでは、SBGの経営は磐石ではないのでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
そもそもSBGが投資を事業として行っている根底にあるビジョンからすれば、そもそもそのような尺度で成績を評価することがおかしいのではないかと思えてきます。
SBGの投資は、値上がりした段階でイグジット(売却)して売却益を得て儲けていく事業として行っているわけではありません。
SBGは、「群戦略」という経営戦略に基づき投資活動を行っています。
「群戦略」についてSBGのWebサイトに記載された内容をザクッと要約すると、
というものです。
自律的であるために、100%の完全子会社として支配することはしませんし、ブランドを統一することもありません。
それぞれの分野で高い競争力を持つ強者たちが、ゆるやかにつながり、大きなビジョンを共有し、連携し合うことで、統一された単独の企業グループではとても達成できないようなとてつもない成果を生み出す戦略なのです。
そして、SBGは、AIを活用し、業界を一新するような企業を選んで投資して群を構築しているとのこと。
つまり、AIこそが次の時代を造るということを確信したうえで、次の時代を支配するようなネットワークの立役者となることを目指して、「ソフトバンクビジョンファンド」というプロジェクトにより大規模かつ長期的な投資を行っているわけです。
今回の決算で評価益が出たから成功、評価損が出たら失敗といった、そんな短期的利益狙いの活動をしているわけではないということです。
孫正義さん、恐るべし❗
まとめ
と、いうことで、今回は、トヨタ自動車とSBGの今回の決算発表を受けて、日本を代表する両社の稼ぎだした利益の質の違いや、それぞれの見据える「その先」について、ご説明いたしました。
トヨタ自動車の利益は、正に圧巻の経営管理によってコロナ禍をはじめとする数々の逆境をはねのけて獲得した実態的な経営資源であり、次の時代に向けた活動への投資源泉でした。
それに対して、SBGの利益は、現時点における投資先企業の評価益でありキャッシュを伴わないものでしたが、そもそも今回の利益はSBGの「群戦略」の目標ではなく、次の時代を造り上げるために積極的かつ大規模かつ長期的視点で行っている投資活動の結果が一旦数字として出ただけ、ということでした。
いずれの企業も、やはり凄まじいの一言ですが、個人的には、SBGの夢の大きさに脱帽❗といった感想です😃
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