「企業戦略論」(ジェイ·B·バーニー)【お薦め本紹介】

経営のバイブル

いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。

中小企業診断士試験の攻略法について、【中小企業診断士試験の攻略法】にまとめていますので、是非そちらもご参照ください。

さて、中小企業診断士試験に役立つ書籍紹介の第3弾です❗(他の書籍紹介はこちら

口述試験の合格発表待ち というフワフワした状態に、読書とアウトプットに勤しむことで対応しております😓

今回は、とうとう、バイブルのうちの一冊に手を出してしまおうと思います❗

ズバリ‼️

ジェイ·B·バーニー著の「企業戦略論」·· でございます❗

バーニーの企業戦略論

バーニーさんと言えば、中小企業診断士試験の勉強でも一次試験対策の、おそらく割と早い段階で【企業経営理論】のテキストなんかで知ることになりますよね。いわゆる、リソースベースドビューの提唱者なわけです。

私は本書を、二次筆記試験後に読んだわけですが、二次筆記試験の事例Ⅰ~Ⅲ(場合によってはⅣも)を貫くテーマである

「企業の強みを機会にぶつけることで、勝ち残り、成長する❗」

を網羅的に解説してくれる名著です。

  • どんな強みを持つべきなのか
  • どうやったらそのような強みを持てるのか

を理論的にわかりやすく説明してくれます。

よく、ポーターvsバーニー の構図で、企業の収益性は業界の競争環境によって決まるためポジショニングが命ポーター)に対して、企業内部の経営資源によって企業の収益性が決まるためリソースが命バーニー)という対比的に位置付けられて語られることが多いように思います(少なくとも、私が触れてきたテキストや戦略理論のまとめ本なんかではそうでした)が、実際に本人達の書籍を読んでみると、「外部環境内部資源の両方が大事」ということはそれぞれの理論の中で、それなりのバランスで十分に主張されていますね。

どちらの説明により重点を置いているかが違うだけで、ポーターも「内部資源なんてどうでも良い」とは言ってないし、バーニーも「外部環境なんて二の次だよ」とは言ってないわけです。

なので、いずれの書籍を読んでも、企業経営理論の全体像がある程度理解できるようにはなっています。

二次筆記試験の前に読んでおけば良かったと思うほどの内容ではありますが、かといってこれを試験直前に読むことはお薦めしません。

分厚いからです。

そして、なんやかやで、試験対策テキストにうまく要約されているため、試験対策としてはテキストを読むのが断然費用対効果の高い方法だと思います。

上巻

さて、そんな本書ですが、上巻で展開されるのは、次のような論点です。

戦略とは競争優位獲得のための企業としてのセオリー
まずは本書の主題である「戦略」というものの定義です。企業が事業を行う上での価値観の源泉であるミッションを、どうやって達成し、どうやって競合への優位を保っていくかの手順や手法といったものが「戦略」だということです。
競争優位獲得の有無は、補正した財務情報の組み合わせで判断
企業が実際に競争優位を獲得できているかどうかの判断は、考えているほど容易ではありません。企業が長期間存続しているという事実が判断根拠だという説もありますが、それだとゆっくり枯れていく企業が高く評価されてしまいます。最も実際的な評価法に思われるステークホルダーからの評価についても、各関係者の立ち位置によって多数の評価結果が乱立し、どの評価を優先してどれだけ重みをつけて考えるかという基準が設定できません。
このため、やはり、財務情報を頼るのが最もベーシックになりますが、ただ、損益計算書や貸借対照表の情報を確認するだけでは、会計基準の範囲内で、経営者の意思によって、恣意的に計数が操作されることに対応できません。そこで、バーニー氏は、税金や利息や無形固定資産の減価償却費を差し引く前の利益(これを「EBITA」(イービットエー)といいます。)まず算出し、ここから法定実効税率を乗じた理論上の税金費用を差し引いた利益を企業の真の実力を表す指標に近いものと扱って、これをベースに投資利益率を計算する方法や、株式市場価値➗純資産で市場評価を測定する方法など、複数の手法を組み合わせて多角的に企業の価値を図り、判断すべきと述べています。
ポーターの競争理論の紹介
経済学の世界で、完全競争による社会的厚生の最大化を説くSCP理論を、企業側からの視点で捉え、不完全競争の「儲かる市場」を狙って事業展開すべしと説いたのが、かの有名なポーター氏である、という説明がなされます。バーニー氏からポーター氏へのリスペクトが伝わる感じです。
業界の特性ごとの有効な戦略
多数の競合が乱立して圧倒的競争優位の決定打がない分散型の業界において、首尾よく大きな共通点を見いだせれば規模の経済で優位性を確保できます。
また、新興業界の場合は、先行者優位を取りに行くために、いち早く経験効果を獲得してコスト優位に立つことや、顧客やサプライヤーを囲い込む戦略が有効だとしています。
成熟業界では、激しいシェア獲得の戦いが生じますが、サービスの充実や、オペレーション効率の向上に努めることで優位性を獲得すべきと言います。
そして、衰退業界であっても、他社を撤退に追い込んだり買収したりすることでシェアを獲得して利益を生むリーダー戦略や品質を下げつつ収益を上げる収穫戦略などがあります。
リソースベースドビュー
以上は外部環境に応じた戦略であるが、同じ環境の中でも企業によって成果に差が生じているのは、企業内部の経営資源の違いによるものということで、我らがVRIO分析の説明がなされます。
特に模倣困難性が重要であることが強調されており、模倣困難性の形成要因として、歴史的経緯(さまざまな経緯を経てようやく構築された資源は、同じ経緯を経なければ構築し難いため模倣が困難)·因果関係不明性(自社にとってあまりに当たり前の組織文化に根差した強みなどは、内部でも強みの要因がわかりにくく、ましてや競合からはどうすれば模倣できるかの見当がつかない)·社会的複雑性(多数の要因が複雑に絡み合って強みを形成している場合は、競合が模倣しようとするとその全てを再現しなければならず、困難性と模倣コストが大きくなる)
などが挙げられています。

と、正に一次試験&二次試験の中心的内容がガンガン語られます。

中巻

そして、中巻に入ると、以下の論点について理論が展開されます。

垂直統合の度合いの決定
事業において付加価値を創出するまでの各活動の連鎖であるバリューチェーンの中で、どこまでの活動を自社内に取り込むかという垂直統合の度合は、活動を外部に委託した場合の管理コスト等の取引に要するコストの大小や、その活動が自社のコアな強みになるかどうか、自社よりうまくできる外部委託先がある場合に自社が同等のレベルを手に入れるために必要となるコストと時間、といったことを総合的に勘案して決めるべし。とのことです。
コストリーダーシップ戦略差別化戦略
まさに競争戦略の理論的説明です。
コストリーダーシップ戦略は、規模の経済や経験効果のほか、資源へのアクセスを独占したり、他社にない技術やオペレーションを保有することでも実現できます。そして、このコスト優位の要因が模倣困難であれば、低コストを実現する能力があることをあけっぴろげにして低価格でシェアを取りに行く戦略が向いているし、模倣の恐れがあるのであれば価格を他社並みに維持してひっそりと高利益率を実現し、新たな投資で更なる優位性を獲得しに行くのが賢いやり方だと、バーニー氏は言います。
差別化戦略については、製品やサービスの質自体の差別化だけでなく、評判やイメージやアフターサービスなどによっても差別化可能です。そして、バーニー氏の力点として、企業内部の機能間の連携や展開のタイミングの妙などに根差した差別化は、特に模倣困難性が高く、持続的競争優位の源泉になると言います。

と、ここまで、一次試験の企業経営理論を勉強された方には馴染み深い内容が続きますが、ここから、以下のような(私には)馴染みの薄かった理論が展開されます。

リアルオプション理論
計画を立てたら一気に投資を行って成功に向けて邁進していくのではなくて、留保できる間は、不確実性が小さくなるまで、投資を留保するという考え方です。
A事業を成立させて、そのうえでB事業を展開することで成長を目指す という展望を描いたとしても、まずはA事業にだけ投資し、うまくいかなければB事業への投資を行わないで撤退したり方向変換できるような選択肢(オプション)を確保しておく ということです。
暗黙的談合
競合と空気を読み合って「価格競争やめとこうね。もし抜け駆けしたらウチも思いっきりやるからね。」というメッセージを暗示して過度な競争を回避する戦略です。競争を阻害するかのような話ですが、バーニー氏は、これが成立する条件(新規参入の脅威が小さく、製品がコモディティ化している 等)に当てはまっている場合には、有効な戦略である として、肯定的に捉えておられます。

この辺って、あんまり中小企業診断士試験で取り扱わない範囲なので、新鮮でしたね。

下巻

そして、下巻では、更に深掘りされた以下のような理論が展開されます。

戦略的提携
中巻の最後に出てきた「暗黙的談合」は暗示的にメッセージを出し合う高度な戦術的展開ですが、明示的に連携のメリットを取りに行く手法として、明確に連携相手と約定を交わす手段も存在します。
うまくいけば、双方がお互いの保有しない技術やノウハウや経営資源を提供し合うことで、シナジーや規模の経済を発現させ、大きな果実を獲得できるWin-Winの関係を築けます。
しかし、そこはやはりビジネスの世界。騙し合いのリスクが存在します。自社独自の資源を持ち寄るふりをしながら果実だけを得ようとしたりするわけです。
そして、それを防ぐために、契約を明確に交わしたり、資本提携をしたり(資本提携すれば相手企業の価値の増減が自社の業績に影響するため裏切りのインセンティブが下がる)、お互いが出資してジョイントベンチャーを立ち上げたりといった手段が取られるということです。
多角化戦略
多角化のメリットとして、二次試験テキストでは、よく、
  • シナジー
  • 範囲の経済
  • 規模の経済
  • リスク分散
あたりが挙げられているかと思いますが、本書ではこれに加えて、
資本の有効活用
新たな事業のリスクを外部機関よりもよりよく把握できることから、低い資本コストで必要資金の調達が可能
多地点競争
例えばZ社とA事業で競合していて、競争劣位で旗色が悪いとしても、B事業でもZ社と競合していてここでは競争優位があるとしたら、Z社はB事業での仕返しを恐れてA事業での攻撃性を緩めるだろう。これによって競争が緩和されて収益力が維持できる という理屈。
なんかが列挙されてて、「理論的だなぁ」😃と感服した次第です。
国際戦略
多角化の一形態として国際化がありますが、上で述べたような多角化のメリットのほかに、
  • 製品ライフサイクル段階の異なる市場へのアクセスによる収益拡大の機会獲得(国内で衰退期に入った製品が新興国では成長期段階にあるなど)
  • 異質の市場に対応することで生まれる新たな着想や新しいコアコンピタンスの獲得
などがあり、こうしたメリットをうまく手に入れていくためにも、国別の事業単位に権限を委譲して各地域の環境に応じた柔軟な意志決定ができる体制を維持しながら、いずれかの地域の事業部で全社共通で活用できそうなノウハウの発見や獲得があれば、当該事業部がリーダーになって社内に普及させることで新手法についての規模の経済もスピーディーに実現する、という柔軟な組織体制を敷くのが理想といいます。そうした体制とスピードが実現できれば、極めて模倣困難性の高い競争優位が獲得できるということです。

まとめ

全体として、

  • 複数の活動複雑に絡み合うことで実現できている強みはイケてる❗(=模倣困難性)
  • 多角化はシナジー範囲の経済が効く関連多角化が大事

といった論点について、すっきり腹落ちする感じです。

二次筆記試験の勉強まで一通りやった段階で読めば面白いし、しっかり頭に入ります。なので、早めに二次試験のテキストも過去問もやってしまって、なんかしないといけないのに一瞬やることなくなったぞ❗という時には、一読をお薦めします。

でも、(私のように)ギリギリのスケジュールに試験対策を詰め込んでいる人にはお薦めしません。

分厚いので❗

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