マーケティングの名著❗(USJ V字回復の舞台裏)

確率思考の戦略論

数字に熱を込めろ❗

いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。

中小企業診断士試験の攻略法について、【中小企業診断士試験の攻略法】にまとめていますので、是非そちらもご参照ください。

今回は、あのユニバーサルスタジオジャパンを、売上低迷期からV字回復させ、USJの代表的アトラクションとなったハリー・ポッターエリアの立役者でもある、森岡毅氏の著作である、「確率思考の戦略論」をご紹介したいと思います。
名著です❗

(ちなみに他のお薦め書籍紹介はコチラをどうぞ)

マーケティングと戦略の名著

本書では、冒頭で触れた日本を代表するマーケターである森岡毅さんが、同じくマーケターで盟友の今西さんとの共著により、古巣のP&Gでの経験や、USJでのV字回復施策の意思決定過程を赤裸々に語っています。マーケティングとは何か、戦略とは何か についての著者の思想と信念がぎっしり詰まった名著です❗

戦略のベースは数字

本書では、戦略とは、要するに顧客に選択してもらう総量(つまりは売上やシェア)をどうやって上げるのか ということであり、そのためには徹底的に数学的分析を行わなければならないといいます。

これがメインテーマです。

顧客にどれだけ自社の商品やサービスが選ばれるかは、確率論に根差した数式で表せるのです。そして、著者は、この数式を分析できるところまで分析しつくしたうえで、望ましい成果を生み出せる確率が最も高い打ち手を、狂気とも言える執念で考え抜くべきだと言います。

腹をくくり覚悟を決める という「熱い気持ち」で事を進めるのはその後の話であって、まずは徹底的に数学を駆使して、冷静な頭脳で戦略を練りに練るべきだと言うのです。

売上を分解すると

さて、では、顧客に自社のプロダクトが選ばれる=シェアを分解してみると、どのような数式で表せるのでしょうか。

ここで、次の式が登場します。

  • 認知率×配荷率×プレファレンス=シェア(売上個数ベース)

認知率というのは、どれだけの人が自社のプロダクトを知っているのか ということ

配荷率は、自社のプロダクトを欲しいと思った顧客のうちどれだけの人が入手可能かを表す率

そして、プレファレンスとは、どれだけの顧客が自社のプロダクトを気に入ってくれるのかを表しています。

どこに資源を集中させるのか

認知率が低い(あまり知られていない)場合や、配荷率が低い(行き渡っていない)場合は、これらの向上策に経営資源を投入することで、容易にシェアを上げることが可能ですが、一定程度向上させた後は、この2つの要因でそれ以上のシェア向上を図ることは難しくなります。

そして、森岡さんは、やはりプレファレンスを高めることがマーケティングの最重要課題だと言います。

差別化で立ち向かう❗

では、プレファレンスを高める、つまり、顧客にとっての自社プロダクトの魅力を増すために、何をすべきでしょうか。

森岡さんは、次の3つの切り口があると言います。

  • ブランドエクイティ(つまりブランド力、ブランド価値)
  • 製品パフォーマンス
  • 価格

これらのどこで勝負すべきかは、そのプロダクトのジャンルによります。

例えば、美容化粧品なんかだと、ブランドイメージやコンセプトをいかに訴求するかで勝負できます。

これが、食品とか洗剤とかになると、製品パフォーマンスの比重が高まってきます。

一方で、価格は重要な要素ですが、安売り競争になることに森岡さんは警鐘を鳴らしています。事業継続に必要な利益と、今後の開発投資を可能にするだけの余力を含めた、プレミアムプライシングこそが大切だということですね。

低価格での勝負はしない。すなわち、差別化戦略です。実際、森岡さんは、USJにマーケターとして入社した後に、海外と比べて低水準であった入場料を一気に引き上げています❗なんと、この動きにあのTDL(東京ディズニーランド)までが追随し、日本のテーマパークの料金の適正化に繋がってきているといいます。低価格勝負は、余程の財務体力のある大企業意外は、基本的に回避すべき戦略なのですね。

マーケティングデータ

それでは、どのようなブランドや製品パフォーマンスが顧客に受け入れられるのかはどうすればわかるのか。ここで、著者らのマーケターとしての真骨頂が発揮されます。市場調査のデータと確率思考の数式を駆使した需要予測がそれです。

市場調査の手法として、ブランド名を伏せて製品パフォーマンスを評価してもらうブラインドテストや、全体の購複数ブランドから今後10回購入する際にどのブランドを何回購入するかを回答してもらい相対的なプレファレンスの強さを把握するテストなどのほか、一定数のユーザーの直近の利用時期を把握することで買頻度や購買確率がわかるガンマ·ポアソン·リーセンシーモデルといった数学的手法も紹介されており、正直私も、全てを理解できていない状態です。このあたり、圧巻です❗(理解しきれてないくせに…。)

中小企業診断士試験への応用

このように、本書は、中小企業診断士試験でも重要論点になるものを多数含んだ内容になっています。

特に、一次試験の企業経営理論、二次試験の事例Ⅰと事例Ⅱ に該当する論点が豊富です。

上でも述べた、競争戦略、ターゲティング、マーケティングリサーチなどについても詳しく説明されているほか、USJを映画限定のテーマパークから「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へと変革した事業ドメインに関する話や、ファミリーエリアを整備してファミリー層を獲得したターゲティングの話など、参考になり勉強になる話が盛り沢山になっています。

まとめ

以上、今回は、USJをV字回復させた実の経験をふんだんに散りばめた戦略的マーケティングの名著を紹介しました。

私は関西在住なので、USJのV字回復は実感としてよくわかります。その舞台裏のドラマだけでも十分読み応えがありますが、そこに著者らの熱い思いと、かなり詳細かつ丁寧に説明される数学的ノウハウなども加わって、極めてパンチのある書籍でした。

ちなみに、本書の著者の森岡毅さんの他の著書にもいくつか好きなものがありますので、それらもまた改めて紹介できればと思っています。

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