「シナジー」と「範囲の経済」と「規模の経済」の違い

「規模の経済」と「範囲の経済」と「シナジー」の違い

強みの源泉

いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。

中小企業診断士試験の攻略法について、【中小企業診断士試験の攻略法】にまとめていますので、是非そちらもご参照ください。

今回は、中小企業診断士試験対策において、一次試験の【企業経営理論】、二次試験の【事例Ⅰ】で頻出の論点である、「規模の経済」「範囲の経済」「シナジー」、について、その違いをご説明いたします。

これらは、企業経営における名著とされる書籍でもよく触れられているところで、例えば、ジェイ·B·バーニー著「企業戦略論」(私の書籍紹介記事はコチラなどでも詳しく論じられているところです。

(それ以外の論点毎の掘り下げ記事については(コチラ)をご参照ください。)

3つの概念

中小企業診断士の勉強をしている中で、一次試験の【企業経営理論】や、二次試験の主に事例Ⅰで、企業の競争優位のための戦略的要素として、「規模の経済」「範囲の経済」「シナジー」が出てきます。

どれも、実現できたら競合に差をつけられる戦略上有効で望ましい状態ということはすぐにわかるのですが、この3つの意味の棲み分けや使い分けとなると、微妙な部分が残ったりするかと思います。(何せ、私がそうでした💦)

そこで、今回は、この3つの意味の違いをご説明し、皆さんに少しでもスッキリ感を持っていただければと思います。

規模の経済

まず、規模の経済ですが、これは、大量に生産することで固定費を分散し、1個当たりのコストが抑えられている状態です。

例えば、ある機械の減価償却費が100発生するとします。そして、この機械を使って10個の製品を生産する場合と、50個の製品を生産する場合を考えてみます。製品1個当たりの変動費は20とします。

減価償却費は固定的に発生する経費ですから、10個生産する場合も、50個生産する場合も、同じく100の費用が発生します。そうすると、それぞれの場合の1個当たりのコストは次のようになります。

10個生産の場合
変動費20+減価償却費10=30
50個生産の場合
変動費20+減価償却費2=22

このように、大量生産すると1個当たりの固定費を薄めることができるため、コストが安くなり、優位性が生まれるのです。上の例で、販売価格が25になると、10個だけ生産している企業は損失が生じてしまいます。50個生産する企業の方がコスト面で有利になり、競争優位を獲得できるというわけです。

これは、もちろん製造業だけでなく、サービス業でも同じように作用します。

このため、規模の経済により競争優位を獲得しようとする企業にとっては、販路を拡大するなどして販売数を増やすことが有効な戦術になります。

範囲の経済

次に範囲の経済です。

これも、規模の経済と同じく、固定費を分散させて薄めることでコスト優位を獲得する状態ですが、規模の経済が同じ製品やサービスの大量生産によってこれを達成するのに対して、範囲の経済は、異なる製品やサービスの生産において、必要な生産手段を共有することでこれを実現するものです。

既存事業と同じ設備やノウハウを活用できる関連事業への多角化を行った場合などには、当該設備やノウハウの構築や維持に関するコストをこれら事業に跨がって負担できるため、単独で事業を行っている場合と比べて、コスト優位を築けるというわけです。

範囲の経済により競争優位を獲得しようとする企業にとっては、必要な設備や技術やノウハウが共通するような事業を展開する「関連多角化」を行うことが有効な戦術になります。

シナジー

シナジーは、広義には範囲の経済を含む意味で使用されることもありますが、明確に使い分けるための狭義の意味合いとしては、複数の製品·サービスを展開することで、それらの間にプラスの相互作用が働き、品質や顧客の満足度や顧客への訴求力が向上することを言います。

先に述べた、規模の経済や範囲の経済との違いは、これら2つがコストの削減によって優位性を築くのに対して、シナジーは成果を向上させることで優位性を築く点です。

例えば、鉄道会社が沿線でテーマパークやホテル事業を営むことで、双方の事業の利用客を増やす施策などがシナジー発揮の戦術にあたりますね。

令和2年度の中小企業診断士二次試験の事例Ⅰにおいて、A社長のおじいさんが既に展開していた高級旅館事業に加えて、酒造事業を営むA社を買収したのは、旅館と老舗酒蔵のシナジーによってブランド力や訴求力の向上を狙ったのかも知れません。

ちなみに、シナジーは相乗効果の意味で、1+1が3にも4にもなるような効果ですが、これとよく似た概念として、相補効果というものもあります。例えば、スキー場がオフシーズンの夏場にキャンプ場を運営するように、1+1で2を生み出すような効果が相補効果にあたります。

まとめ

ということで、今回は、中小企業診断士試験対策において、いまいち意味の棲み分けがわかりにくい、「規模の経済」「範囲の経済」「シナジー」のそれぞれについて、整理してみました。

規模の経済
同じ製品·サービスを大量に生産することで固定費を分散させてコスト削減
範囲の経済
異なる製品·サービスの生産により固定費を分散させてコスト削減
シナジー
複数の製品·サービスの間で相互に好影響を与えあって1+1を3にも4にもする

いずれも、単独で事業を行っている場合に比べて優位を築くことができる有効な手段であり、企業の事業戦略上も、検討必須の要素ですので、意味を理解して言葉を使いこなせるようになると、きっと中小企業診断士試験対策上(特に二次試験対策)もかなり強い味方になりそうな気がしますね☺️

皆さんの参考になれば幸いです。

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