ネットワーク効果(事例Ⅰ対応)

ネットワーク効果

ユーザー数↔️強み

いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。

中小企業診断士試験の攻略法について、【中小企業診断士試験の攻略法】にて全般的にまとめていますので、是非そちらもご参照ください。

今回は、企業経営理論事例Ⅰにおける重要論点の一つである、ネットワーク効果について、どういった効果なのか、どのように活用するのか、をご説明したいと思います。

中小企業診断士二次試験でも過去に出題実績のある論点ですし、何よりも現代と将来のビジネス環境を見ていくうえで、避けては通れない重要な概念になるかと思いますので、是非、お読みいただければと思います。

ネットワーク効果とは?

まず最初に、ネットワーク効果とは何でしょうか?

ネットワーク効果とは、

「顧客にとっての製品やサービスの価値が、ユーザー数に依存するという性質」

のことです。

ネットワーク外部性と呼ばれることもあります。

製品やサービスの顧客にとっての価値、言い換えると、競合に対する競争力を考えるうえで重要な要素は何か、と言われると、真っ先に思い浮かぶのは、
「その製品やサービス自体の機能、そして価格」ではないかと思いますが、ある種の製品やサービスにおいては、同じ製品やサービスを使っている仲間が多いということが、優位性の要素となることがあります。
それどころか、利用者数の多さ、すなわち利用シェアこそが、その製品やサービスの競争力を決定付ける最重要ポイントになることも往々にしてあります。

では、どのような場合にこうした、ユーザー数の多さ=顧客にとっての価値が成立するのでしょうか。
理解の近道として、具体例をいくつかお示ししたいと思います。

具体的な事例

例えばどのような製品やサービスにおいて、ネットワーク効果が見られるのでしょうか。

いくつかの代表的な例を挙げてみます。

電話
まずは、ものすごくありきたりな例ですが、電話が最も基本的な例になります。
電話というのは、通話する相手がいてはじめて価値が成立しますよね。いくら、見た目が高級で音声機能が優れていて持ちやすさ抜群で、おまけに電話料金が格安だとしても、電話のネットワークに誰も加入していなかったら、製品としてもサービスとしても無価値ですよね。
SNS
SNSもまた、そこに多くの参加者がいて、自分の発信を見てくれたり、他ユーザーからの発信がたくさんあったり、多くのユーザーとかかわり合えるからこそ価値があるわけですよね。
ユーザー1億人で使い勝手イマイチのSNSアプリと、ユーザー100人のものすごく高機能なSNSアプリのどちらを選ぶかと言われたら、迷いなく前者ですよね。
ゲーム機
そのゲーム機本体でできるゲームソフトの種類とクオリティこそが決め手ですよね。また、オンラインで他のプレイヤーと競ったり交流したりするタイプのゲームだったら、SNS同様に、ユーザー数が直接的に価値に結び付きます。
いくらゲーム機が高機能でも、ユーザーが少ないと、ソフトの開発会社が集まってきませんから、面白いソフトが開発されずユーザーにとっての価値は低いままです。
PCやスマホのOS
WindowsとMacOS、AndroidとiOSなど、OS間の競争が激しいですが、ユーザーが多くアプリ開発者が多く集まると使い勝手が増してさらにユーザーが集まるという性質があります。

これら以外でも、例えば、ある製品のシェアが高まってその製品利用のためのインフラが整備されることで製品の利用が促進されるような場合もあります。(水素ステーションが整備されれば燃料電池車ももっと普及するでしょうか。)

ネットワーク効果の重要性

このネットワーク効果、企業の事業戦略上、どのような局面で重要になってくるのでしょうか。

まずは、新規参入の脅威を取り除く参入障壁として機能することが挙げられます。
ユーザー数の多さが競争力を決定付ける重要な要素となる業種において、他社に先駆けて一定のシェアを獲得してしまえば、新たな参入者が現れても、既に獲得したユーザー数そのものが強力な強みとなって自社のプロダクトが選ばれ続ける状況を維持できます。それが明らかであれば、そもそも勝ち目のない勝負を挑んでくる新規参入者は現れず、安定的に競争優位を維持し続けることができます。
今から使い勝手の良いSNSアプリを開発できたとしても、Facebookに打ち勝てるとは到底思えませんよね😅

次に、製品やサービスの品質と価格面での差別化が困難な状況下において、競争の軸を少しズラして、ユーザー数を顧客価値に結びつける転換に成功すれば、ネットワーク効果によって強力な差別化要素が生まれます。

ネットワーク効果と親和性が高いかどうかは、業種や業態によって様々であって、どのような業種でもこれが当てはまるわけではありませんが、ユーザー同士の交流を促進したり、ユーザー間での競争意識を刺激したり、ユーザーのアイデアを採用して改良や追加サービスを繰り返すことで、製品やサービスそのものの価値に加えて、ユーザー同士の交流と他ユーザーからの評価や承認による顧客満足という付加価値をうまく生み出すことができれば、コモデティ化した業界内で、ネットワーク効果という強みにより他社と差別化し、抜きん出ることができます。
そして、ネットワーク効果によって一旦抜きん出たら、ユーザー数の多さが価値を高め、それがさらに多くのユーザーを呼び寄せ、さらに付加価値が高まる、という好循環を実現することができます。
一見、ネットワーク効果と無関係に見えるビジネスモデルであっても、ユーザー数を付加価値に繋げるようなアプローチができないかどうかを探索してみることは、思わぬ大チャンスを呼び寄せるかも知れませんね。

中小企業にとってのネットワーク効果

さて、中小企業の経営戦略においては、ネットワーク効果をどのように活用し、どのようなことに留意していけば良いのでしょうか。

まず大事なことは、自社の属する業界またはこれから参入しようとする業界において、現状でネットワーク効果が重要な競争要因になっているかどうかを把握することです。
そのためにも、自社が何を売っているかではなく、自社の製品やサービスを購入してくれる顧客がその購入によって何を解決しようとしているのかをしっかりと見極めなければなりません。
(こうした考え方については、【「ジョブ理論」顧客ニーズとは何なのか】でも説明していますので、是非ご参照ください。)
そして、ネットワーク効果による顧客ニーズの充足が無視できない要素であることが確認できれば、次に、いかにして他社に先駆けてユーザー数を獲得するかを優先的検討事項として取り組まなければなりません。
この時、競合が大手で、潤沢な資金や経営資源を投入してシェアの拡大を図ってくるのであれば、これとまともに撃ち合うことは不利ですから、競合とターゲットをずらす等の対策が必要になります。
一方、自社がシェア獲得合戦において有利なポジションをとれているのであれば、競合に出し抜かれる前に一気に経営資源を集中してシェアを高めるのが戦略上有効な手段となります。

ネットワーク効果が競争上の最重要要素となるような業界では、えてして、勝者総取りの構図になりがちです。しかし、こうした業界にあっても、既存の大企業しか勝てないわけではありません。
他社が気づいていないネットワーク効果の芽に気づき、首尾よく他に先駆けてユーザー基盤を築くことができれば、大企業の新規参入すら跳ね返せる持続的競争優位を手に入れることができるのです。

まとめ

以上、今回は、企業の競争戦略において重要な要素となる、ネットワーク効果について、意味や実例や競争戦略上の留意点などについて説明しました。

  • ネットワーク効果とは、その製品やサービスの価値がユーザー数の多さによって決まる特性のこと
  • 自社の属する業界においてネットワーク効果が重要な競争要素であるかどうかを見極めることが重要
  • ネットワーク効果が重要要素なら、競合の状況を見ながら、シェア獲得に経営資源を集中させる
  • 既に高いシェアを持つ競合や、シェア獲得競争で勝てそうにない大手との正面衝突は避ける

といったことがポイントでしたね。

中小企業診断士二次試験においても、かなり古い事例ですが、平成17年度の事例Ⅰでも問われた論点ですし、経営戦略を考察するうえでは避けては通れない論点になるかと思いますので、是非、この機会に、内容や実例をインプットしておいていただければと思います。

(他の論点の掘り下げについては、コチラもご参照ください。)

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