中小企業診断士試験の攻略法

独学で中小企業診断士になる❗

独学で取る❗

当ページをご覧いただきありがとうございます。
なおちんです。

令和2年度の中小企業診断士試験を受験しました。

私は取り立てて頭脳明晰なわけでもなく、人一倍記憶力や要領が良いわけでもない一人のサラリーマンなのですが、そんな私が、無事、独学でストレート合格できました。

合格までの道程は決して気楽ではなかったですが、楽しんで勉強に取り組めたことと、結果的に効率的な方法で勉強できたことが要因ではないかと思っています。

当ページでは、一独学生であった私の経験からわかったことや気づいたことを中心にしつつ、試験後もなんだかんだと楽しく企業経営に関する知識に触れ続けている結果見えてきたことなども加味しながら、これから中小企業診断士を目指そうという方に向けて、合格に向けた勉強法や考え方をご紹介し、皆様の力になれればと考えています。

(その他、私のブログのカテゴリー別のページもご参照ください。)

長い記事になっていますので、目次から興味のあるところだけお読みください。もちろん、時間をかけて最初からお読みいただける方は大歓迎です😃

中小企業診断士試験の概要

中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応する診断·助言を行う専門家で、「中小企業支援法」第11条を根拠とする国家資格です。(一般社団法人中小企業診断協会ホームページもご参照ください。)

そして、中小企業診断士になるためには、まず、一次試験、に合格したうえで、以下のどちらかを経なければなりません。

  1. 二次試験を受けて合格し、さらに15日以上、中小企業の診断と助言の実務に従事する。
  2. 中小企業基盤整備機構(又は登録養成機関)が行う養成課程を修了する。

こちらについても、一般社団法人中小企業診断協会サイトをご参照ください。

私は1.の二次試験コースでの合格経験者です。2.の養成課程に関しては、相当な費用がかかるため、選択しませんでした。当ページにおいては、1.のコースを選択される方を想定して、情報発信を行っていきたいと思います。

一次試験

一次試験は、マークシート式で、例年、7月~8月に2日間の日程で、以下の7科目について実施されます。

【1日目】

  • 経済学·経済政策
  • 財務·会計
  • 企業経営理論
  • 運営管理

【2日目】

  • 経営法務
  • 経営情報システム
  • 中小企業経営·中小企業政策

二次試験

二次試験は、筆記試験と口述試験が行われます。筆記試験をパスした人が口述試験に進みますが、口述試験は落とすための試験ではなくほぼ100%の方が通過しますので、試験対策のメインは筆記試験になります。

筆記試験は記述式で、例年10月~11月頃に1日間の日程で実施され、口述試験は例年12月~翌年1月頃の1日間で個別で10分間程度の規模で実施されます。

試験科目は、筆記試験が以下の4科目で、口述試験ではこの中から1つか2つの事例について試験官からの質問に口頭で回答することになります。

事例Ⅰ
組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
事例Ⅱ
マーケティング·流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
事例Ⅲ
生産·技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
事例Ⅳ
財務·会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

私の経験上、二次筆記試験が、中小企業診断士試験における山場です❗

各科目の攻略法

それでは、肝心の科目毎の攻略法について、私の経験を踏まえて述べたいと思います。

一次試験科目

まずは最初の関門である一次試験です。マークシート式で知識を問われる一次試験については、基本的に、

  • テキストを読む
  • 問題を解く
  • わからない部分は再びテキストを読む

を繰り返すことが王道ですが、それ以外にも、テキストとは異なる視点や補足説明で知識の充実を図ることができる無料動画や、論点の深い理解だけでなくモチベーションアップにも効果がある一般書籍など、いろいろと使えるツールがあります。(詳しくは、【ツール活用で勉強を効率化】をご参照ください。)

また、一次試験科目の勉強順に関するお薦めは、【一次試験科目の勉強の順番】にて、
各科目の中身のうち優先的に勉強しておくべきポイントについては【一次試験対策、どこを勉強すれば点になる?】にて、
その他の勉強法等に関する情報は順次コチラにて発信していますので、これらもご参照いただければと思います。

経済学·経済政策

この科目では、企業などの生産者と、家計などの消費者がそれぞれ利潤最大化のために行動することによって、

  • 製品やサービス(まとめて「財」といいます。)の価格や供給量がどうなるのか
  • 完全競争が実現している市場と独占的市場とではどのような違いが出るのか
  • 課税などの市場外部からの要因によってどのような影響が出るのか

といったことについて、経済学理論上ではどのような結論になるかということが出題されます。

この科目の攻略ポイントとして、経済学という世界における考え方の癖というか作法のようになっている、以下の基本的な概念を押さえておくことが重要です。

限界○○
●●を1単位増やすときの○○の変動量という考え方です。
生産を1単位増やすときに追加で必要になる費用を表す限界費用や、消費を1単位増やした時にどれだけの効用(消費者の満足度のことです)の増加があるかを表す限界効用などが代表例です。
X軸とY軸のグラフ
この科目は、とにかく2軸のグラフが多用されます。生産量と総費用や、消費量と効用がX軸とY軸にセットされ、この2つの関係を曲線で表すグラフがバンバン出てきます。
そして、先ほどの限界○○の意味を踏まえたうえで、曲線の接線の傾きが限界○○になるということをご理解いただければ、グラフ問題の多くは読み解けるかと思います。
2つの曲線が交差するグラフ
次に覚えるべきは、需要曲線と供給曲線IS·LM曲線のように、2本の曲線が交差する形態のグラフです。
どうなった時にどちらの曲線が上下左右のいずれに動くのか、どうなったら曲線の傾きがどう変動するのか、をきちんと理解してしまえば、多くの設問が結局はその知識の応用で解けるものですので、そこを少し時間をかけてきちんと理解してしまいましょう。
例えば、ある財の取引に関する課税によって企業の負担が増えると、生産者側の採算悪化によって供給曲線が上に移動する、などです。

この科目は、二次試験に関係しない科目ですので、実際のところ、優先順位は低めで考えておいて問題ないかと思います。

一見、取っつきにくく見えますが、基本的な概念を押さえてしまえばその応用で解ける設問が意外なほどに多いという特徴があります。

とにかく、テキストと過去問のサイクルがものすごく効いてくる科目です❗

財務会計

実は私は、中小企業診断士試験を受験する直近の数年間に亘って経理実務に携わっておりまして、財務会計に関しては、さすがに特段の試験勉強を要さない状態になっておりました。そんなわけで、財務会計に関しては、当サイトのテーマである、等身大の独学生の勉強法というわけではなくなるのですが、それでも、効率よく合格ラインに到達するために何が必要かというエッセンスをお伝えできればと思います。

複式簿記
まずは、何はともあれ、複式簿記を理解することに尽きます。借方貸方という概念を理解し、資産·負債·純資産という貸借対照表項目と、収益·費用という損益計算書項目の関係が借方と貸方の左右でイメージできるようになることがスタートになります。
(こちらの記事【複式簿記の基本を理解しよう】でわかりやすく解説していますので、是非ご参照ください。)
損益分岐点分析
費用を、売上数量に比例して発生する変動費と、売上数量に関係なく一定額で発生する固定費に分けて、ある売上単価の下で、何個売れば損益トントンになるかを計算で求める手法です。特に難しい考え方ではないので、計算ミスや引っ掛け問題への対応力が勝負になります。
減価償却
資産への投資を行った場合、キャッシュアウトは投資した際に発生しますが、費用計上は減価償却という考え方によって複数期間に跨がる、という概念について理解しましょう。この、キャッシュと損益の期間のズレをきっちり押さえておくと、後で出てくるNPV等の計算方法の理解が早まります。
そして、定額法と定率法のそれぞれの算定方法について理解できれば大丈夫です。
キャッシュフロー計算書
財務諸表の一つで、キャッシュの変動を表す表です。理解すべきポイントは、営業活動、投資活動、財務活動、の3区分で表現することと、営業活動によるキャッシュフローの計算方法は、損益計算書の税引前当期純利益からスタートしてノンキャッシュ費用を加算し、キャッシュの出入りと対照に動く貸借対照表項目の増減を加減算する間接法という方法が一般的であることです。
特に間接法の貸借対照表項目の増減がキャッシュの加算と減算のどちらになるかで混乱することもありますが、複式簿記と貸借対照表の形からイメージすれば理解できます。(借方に計上されるもの(売掛金の増、買掛金の減など)は、対照としてキャッシュが貸方に計上されるため減算項目、貸方に計上されるもの(売掛金の減、買掛金の増など)はキャッシュが借方に計上される仕訳になるため加算項目という風に。)
資本市場線と有効フロンティア
投資対象をいくつかに分割してポートフォリオ化すれば、同じリターンを期待しながらリスクを低下させられるということを理解したうえで、あとは図を見て曲線と直線の名前を覚えれば高い確率で得点に繋がります。
WACC
加重平均資本コストのことです。企業は、ざっくり言うと、他人から借りる(負債)か、自ら用意する(純資産)のいずれかで資金を調達して、それを使って事業活動をするわけですが、当然、その調達にはコストがかかります。
外部からの借入に関しては利息がかかりますし、株主資本である純資産に関しては株主への配当を行わなければならないというコストがかかるのです。
WACCというのは、企業の資金調達全体の調達コストを表すもので、負債の利息コストと株主資本の配当コストを加重平均することでこれを求めるというものです。
ただし、ここで一つ注意事項があって、負債の利息コストは、法人税等に関する所得計算上、損金(税務上の費用)に含められることで税金を安くする効果があるため、これを差し引いてコストを考える必要があります。
NPV(正味現在価値)
投資をするかどうかの判断をする際に、その投資によって将来に亘って生じる効果と投資額の差額を投資価値と考え、これの現在価値を計測する手法です。
さて、現在価値というのが出てきました。これは、資金が手元にあれば一定の利率で運用できるということを前提に、現在の100万円と1年後の100万円は同じではないよね、という考え方です。
例えば、年率5%で運用できる状況にあるとすると、現在の100万円と1年後の105万円が等しいと評価されるわけです。ちなみに10年後で言えば110万2500円が現在の100万円と等しいわけです。言い換えると、「10年後に110万2500円の収入があります」というのは、「今100万円持っています」というのと評価としては同じというわけです。そして、この場合の5%を割引率といいます。つまり、割引率5%の下では、10年後の110万2500円の現在価値は100万円であると表現されるわけです。
ということで、NPVとは、投資とそれを活用した事業実施の中での収入と支出を、それぞれの発生時点ごとに割引率を用いて現在価値に割り戻し、収入と支出のどちらがどれだけ多いかを計測するのです。
この、将来の収支を見込む際に、減価償却費はノンキャッシュであるが、税金計算上は損金と認められるため、税金を安くする効果があることを考慮に入れる必要があります。
そして、NPVが正の値なら投資価値あり、マイナスなら投資はやめておく、という判断になるわけです。

以上、複式簿記の理解が全ての基本になりますが、そこさえ理解してしまえば、あとはスムーズに理解が広がり深まっていくはずです。何事もそうだと思いますが、最初に基本の概念を理解することが一番難しかったりしますよね。

資本市場線やWACCなんかは、結構な頻度で出題されますし、図や式を覚えさえすれば、それほど深く理解できていなくても、得点になりますので、表面的でも良いので押さえるようにしておきましょう。

この科目は、特に苦手意識のある方は早めに手をつけて、とりあえず複式簿記を理解することで気持ちを軽くしておいた方が、試験勉強全体のモチベーション維持の意味でも良いと思います。

企業経営理論

この科目は、まがうことなき最重要科目です。

一次試験でも、本科目の理解が、中小企業経営·中小企業政策の学習に効いてきますし、何よりも、二次試験で全科目に関連する重要論点がふんだんに含まれています。

そしてまた、他の科目は好き嫌いや興味の有無が分かれるのに対して、企業経営の基本を押さえられる本科目は、中小企業診断士を目指されているほとんどの方が興味を持つ内容ではないでしょうか。

この科目は、大きく、経営戦略論組織論マーケティング論、に分かれています。なぜ単独の科目の中にこれだけ重要論点を詰め込んでいるのかと不思議になるくらいですが、その中でも特に重要なポイントは以下のとおりです。

経営戦略論

事業ドメインと事企業ドメイン
事業ドメインというのは、その事業において、誰に何を提供するのか、その提供にあたって自社の持つどういう能力を活かすのか、という事業領域の定義のことです。
企業ドメインとは、複数の事業を展開する場合の、その展開の領域のことです。
つまり、単独事業しか実施しない企業にとっては、事業ドメイン=企業ドメインとなります。
規模の経済、範囲の経済、シナジー
これらはいずれも、事業を他社よりも有利に進めるための強力な手段になるものです。規模の経済は、大量生産によって1単位当たりの固定費を薄めてコスト面で優位に立つことを指し、範囲の経済は複数の製品やサービスに共通する活動がある場合に当該活動に伴うコストを分散させられることでコスト面での優位を築くものです。
これらがいずれもコスト優位を狙うものであるのに対して、シナジーは、複数の製品やサービスを展開することで、それらが相乗効果を及ぼしあって、その付加価値や成果が高まるというものです。
これについては、別記事の【「シナジー」と「範囲の経済」と「規模の経済」の違い】もご参照ください。
PPM(プロダクト·ポートフォリオ·マネジメント)
企業が複数の事業を展開するにあたって、どのように事業の組み合わせ(ポートフォリオ)を持てば良いかを考えるためのツールです。
市場の成長率と市場内でのシェアを軸とする4象限のマトリックスで、
シェア高 シェア低
成長率高 花形 問題児
成長率低 金のなる木 負け犬
という風に各事業を位置付けます。そして、金のなる木が生み出すキャッシュを、高成長の花形と問題児に投資し、次なる収益源に育てていくということです。一方、負け犬となった事業についても、低収入かつ低支出のまま細々とキャッシュを稼ぐ場合もありますので、負け犬=撤退というわけでもありません。(なんか、この辺りがちょいちょい出題されます。)
ただし、このツールの欠点は、範囲の経済やシナジーといった事業間の関係性などを考慮していないという欠点もあります。(この欠点についても、ちょいちょい出題されます。)
技術経営(モジュール型、インテグラル型)
製品の設計思想の体系です。
モジュール型は、製品を構成する個々の部品が独立していて、部品間のつながり(インターフェース)が共通化されているため、部品メーカーの相互調整が不要となるような設計思想です。パソコンがモジュール型の代表例です。インターフェースにさえ従っていれば良いため、部品ごとにメーカーが独自の改良や性能向上を行う自由度が高まり、また、構成部品の入れ替えが容易であることから、構成の多様性が確保できるメリットがある一方、インターフェースが汎用であることから機構全体としてムダを根絶できないというデメリットもあります。
インテグラル型は、製品を構成する部品同士が相互に最適化されるように設計する思想で、自動車が代表例です。部品間の相互調整が求められるため、部分の設計変更が全体に影響を及ぼしてしまうといったデメリットがある一方で、機構全体として全てが最適化された製品設計とすることができます。

組織論

バーナードの組織の条件
バーナードさんという組織論の大家によれば、組織の成立条件とは、共通の目的があるメンバーが貢献意欲をもっているメンバー間のコミュニケーションがあるの3つです。
組織の5つの原則
組織には、専門化の原則(各役割に特化するよう分割することで成果を高める)、権限責任一致の原則(権限と責任をバランスさせる)、統制範囲の原則(1人の管理者が統制できる範囲には限界があることを前提に組織を設計する)、命令統一性の原則(メンバーは常に一人の上司からの命令系統に属する)、例外の原則(経営者は日常のルーティンを部下に任せて例外的な事態への対応や意志決定を行うべし)、という原則があります。
組織構造
組織には、機能別組織と、事業部制組織と、マトリックス組織があります。
機能別組織は、役割ごとに部門を分けるもので、専門化による成果の向上や規模の経済の実現や部門間に跨がる全体の意思決定が経営者に集中するためトップの中央集権体制が構築できるメリットがある一方、組織が大きくなると、トップが部門間の揉め事(コンフリクト)の解消に忙殺されてしまうことや、全部門を統括する後継経営者の育成が困難になるといったデメリットがあります。
事業部制組織は、各機能部門をその内側にもった事業毎の部門がそれぞれの事業を実施する体制で、各事業部がそれぞれの事業環境に合わせて迅速かつ柔軟に意思決定できることや、複数機能を使いこなす事業部長を経験させることで優れた後継者の育成や発見ができるというメリットがある一方、部門毎の利益を優先して全体最適視点に欠けてしまうことや、各部門で同じ機能が重複するためムダが生じるというデメリットがあります。
マトリックス組織は、事業別部門と機能別部門の2つの軸で二次元的な管理構造を有する組織形態で、機能の重複によるムダをなくしつつ各事業に特化した判断もできるというメリットがある一方、命令一元化の原則を無視してメンバーが事業部の上司と機能別部門の上司の2人から命令を受ける形態(ワンマンツーボスシステム)となるため、組織内の命令系統が複雑化しコンフリクトが生じやすいというデメリットがあります。
リーダーシップ論
優れたリーダーシップには何が必要かという研究は様々になされていますが、結局、部下の能力や機能面を重視するビジネスライクな側面と、部下との人間関係や職場の雰囲気を良好に保つといった側面の両方が大事(PM理論)で、チームの置かれた環境によって好ましいリーダー像も変わる(コンティンジェンシー理論)といったことが定説になっています。
モチベーション理論
組織メンバーが動くためのモチベーションの捉え方にも色々あって、
仕事が嫌いでサボろうとするX理論的人間観と自ら納得した目標には積極的に取り組むY理論的人間観を提示する「X理論·Y理論」や、
モチベーションに影響を及ぼす要因を、満たされないと不満になる衛生要因(満たされても満足は得られない)と、満たされると満足する動機づけ要因(満たされなくても不満はない)とに分けて考える「二要因論」
などがあります。
人事管理
採用、配置、育成、評価、報酬の各面において、人的資源を管理するという、人事戦略についての論点です。
育成には職場で業務の中で育成するOJTと、集合研修などで体系的に育成するOff-JTと、従業員の自発的研鑽を支援する自己啓発という形態があること、
評価には成果を重視する成果主義やプロセスを重視するコンピテンシーモデルがあり、成果主義は意外と課題が多い(評価の透明性と納得性が必要であり協力性が失われないように留意が必要である等)、
といったことが主な内容です。
会社勤めの方であれば、自社の人事制度がどうなっているかを考えながら読み進めれば頭に入りやすいと思います。
労働法制
法定労働時間や解雇のための条件とかそういった内容です。
私は…正直、ここは後回しにして、結果的に捨てましたね😅

マーケティング論

マーケティングの4P
製品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)を組み合わせて、自社の製品サービスを市場に適合させ、魅力を効果的に訴求し、顧客満足に繋げるのがマーケティングである、という考え方です。
消費者行動
消費者が製品やサービスを購入するまでには、AIDMAモデルといわれる過程があります。
まずその商品を認知(Attention)し、興味(Interst)をもち、欲しいと願望(Desire)し、その商品を記憶(Memory)し、購買(Action)する、というモデルです。知ってもらうための周知活動や、興味をもってもらうための訴求ポイントの設定が重要ということですね。
さらに最近では、AISUSモデルというものへの移行が進んでいます。認知(Attention)、興味(Interst)までは同じですが、そこから、探索(Serch)し、購買(Action)し、感想をシェア(Share)するという一連の行動です。シェアは、他の顧客への影響が大きいため、売り切って終わりではなく、その後の口コミまで考慮した製品展開や訴求が重要性を増しているということですね。
ブランド
ブランドは、正に差別化により競争力を維持していくために、なくてはならない要素です。一次試験では、ブランド戦略ブランド分類などが重要論点です。
ブランド戦略は、次の表のとおりで、
既存製品 新製品
既存ブランド ライン拡張 ブランド拡張
新たなブランド マルチブランド 新ブランド
です。
ブランド分類は、製造メーカーが使用するナショナルブランドと、卸売業者や小売業者が使用するプライベートブランドがあります。

この科目に関しては、テキストももちろん有効ですが、各論点についての名著と呼ばれる一般書籍が世にたくさんありますので、時間が許せば、それらをお読みになることをお薦めします。テキストは必要な知識を効率的に詰め込むために極めて有効ですが、学習効果の向上に何より大切な理解する楽しみを得るという意味では、名著と呼ばれる書籍がやはり優れています。世の秀才達が、自分の考え抜いたアイデアや概念を伝えようと真剣に取り組んで発信した情報ですから、純粋に面白いですし、学習のモチベーションも上がります😃

(私のお薦めの書籍をコチラにて紹介していますので、よかったら参考にしてください。)

上で列挙したポイントはどれも一次試験で得点につながる重要論点ですが、労働法制については覚えることが多い割に出題数は限られていますので、とりあえずテキストを一読だけしておいて、深い学習は後回しでも良いと思います。最悪時間がなければ思いきって捨てるくらいでも良いかと(私はそうしました😅)。

一方で、ドメイン、規模の経済、範囲の経済、シナジー、組織構造、4P、ブランドについては、二次試験でフル活用する知識になりますので、しっかりと内容を理解しておくべきです。

運営管理

この科目は、大きく生産管理店舗·販売管理に分かれています。店舗·販売管理は、実生活でお店に行って買い物をされる際に目にする、陳列方法店舗設計が中心なのでイメージしやすいのですが、生産管理は、製造業に携わっていない方には、一からの学習となるかと思います。私もその一人でした😅が、やってみると楽しいため、ハマり始めるとグイグイ勉強が進んでいく感じです。

生産管理に関する重要な論点としては、以下のようなものがあります。

生産方式
製造業においては、材料を投入し、加工し、組み立てて製品を完成させていくわけですが、この生産活動には、同じ製品を連続して作り続ける場合もあれば、一個一個別のものを作っていく場合もありますよね。
この、製品の製造の流し方によって、以下のいくつかの生産方式があります。
  • ライン生産方式(同じ製品を連続して生産)
  • ロット生産方式(一定数のまとまり(ロット)ごとに製品を切り替えて生産)
  • 個別生産方式(一個一個別の製品を生産)
  • セル生産方式(複数工程を1人や少人数で担当する生産セルと呼ばれる生産単位をいくつも作ってそれぞれのセルが並行して生産)
そして、これらの生産方式に応じて、それぞれ適切な製造設備のレイアウトの種類があります。
  • 製品別レイアウト(特定の製品の製造工程に特化して直線化に近くなるように最適化したレイアウト。ライン生産方式大ロットのロット生産に適している)
  • 機能別レイアウト(生産設備の機能毎に区分したレイアウト。個別生産方式小ロットのロット生産に適している)
  • グループ別レイアウト(複数の工程に対応した設備をまとめて配置するグループをいくつも設けるレイアウト。セル生産方式に適している)
生産計画
どれだけの数量の製品を、どのようなスケジュールで生産するか、そのために各工程において、いつ、何の作業を行うか、を決めるのが生産計画です。
どの程度のスパンの計画を決めるかによって、大日程計画(月別の生産量)、中日程計画(部門別の生産予定)、小日程計画(日々の作業)、があります。
スケジュールのたて方には、フローショップ·スケジューリング(工程順序が類似する複数種類の製品について、どの製品から流していくかを決める。最終工程の所要時間が最も短い製品を最後にし、第1工程こ所要時間が最も短い製品から生産開始する考え方のジョンソン法が代表的)、ジョブショップ·スケジューリング(使用する設備や工程順序が異なる複数種類の製品について、どの順番で作業するかを決める)、アローダイヤグラム(複数の作業が関係し合うような複雑な一つのプロジェクトについて、作業順序の整理と日程管理を行うために、作業のつながりと所要時間を図示するツール。ボトルネックとなる最優先の作業ルートをクリティカル·パスという。)、などがあります。
資材管理
生産計画どおりに生産活動ができるように、いつ、どれだけの資材を確保するかを管理するのが資材管理です。
試験に頻出のワードとして、
MRP(資材所要量計画)(生産計画と製品の部品構成表から必要数量を割り出し、現有在庫情報と、発注してから納品されるまでのリードタイム情報から、いつ何個の資材を発注するのかを決める)、
部品構成表(BOM)(製品に必要な部品の種類と個数の情報をわかりやすく記録した表。単に必要な部品数を並列列挙するサマリー型と、部品同士の関係性も表すストラクチャー型がある。)
などがあります。
    
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Industrial Engineeringのことで、「経営工学」と訳されるものです。作業そのものについて研究するもので、どのように作業するのが最も効率的で適切か(この最適な作業方法を標準作業といいます。)を決定する方法研究と、標準作業を行うために必要な時間(これを標準時間と言います。)を計測する作業測定があります。
ここは、頻出ポイントの宝庫で、作業測定ワークサンプリング法などは是非、手法をしっかり頭に叩き込んでおきましょう❗
QC7つ道具
これも、頻出論点です❗是非覚えておきましょう❗
  1. グラフ
  2. パレート図
  3. チェックシート
  4. ヒストグラム
  5. 散布図
  6. 管理図
  7. 特性要因図
です。
特に、各図で何が把握できるかの知識を問われる選択問題が多く出題されますし、中でも頻出の管理図の見方は絶対押さえておきたいところですね。

店舗·販売管理に関する重要な論点としては、以下のようなものがあります。

店舗に関する法律
ここでは、まちづくり三法と呼ばれる、大規模小売店舗立地法中心市街地活性化法都市計画法を押さえる必要があります。
特に、都市計画法用途地域の分類と、そのうちどの業態でどの規模の店舗がどの用途地域に出店できるのかは頻出です❗
店舗レイアウト
売場のレイアウトや陳列方法を学びます。重要ポイントは、客動線を長くすることや、重点的に販売したい商品のフェイス数を増やすことなどです。
商品管理
自店が「誰に何を売る店なのか」というコンセプトを明確にしたうえで、ターゲットとする顧客が何を期待しているのかという顧客視点と、利益率といった店舗経営上の視点の両方からバランスのとれた品揃えを行うものです。
利益率を考える時、平均在庫高に対する当該商品の売上総利益の比率を表すGMROI(商品投下資本粗利益率)が、重要指標になります。
また、商品カテゴリー毎の利益貢献の度合いを、売上構成比×粗利益率で表す相乗積も重要論点ですね。
物流
ここでは、商品を集荷して小売店に配荷する物流拠点のことを学びます。物流倉庫内での作業内容として、必要な商品を倉庫内から選び出すピッキング作業があり、ガサッとまとめてピッキングしてから店ごとに分ける種まき方式や、店ごとに必要な分を倉庫内を順次回って集める摘み取り方式を押さえましょう。
また、物流センターを集約してモノと情報を集中させる一括物流センターも重要論点です。在庫を抱えるDC型(ディストリビューションセンター)と、在庫をもたずに仕分けと流通加工のみ行う通過型のTC(トランスファーセンター)があります。
販売流通システム
販売を管理するためのシステムとして、POSシステムというものがあります。コンビニのレジなんかで商品を買うと、店員さんが一品ずつ読み込んでいきますよね。あれは、単に販売価格を計算しているだけではなく、何が売れたのかの情報をシステムに読み込ませているわけです。そうすることで、何がいつ売れたかがわかるため、在庫数量の把握や、何と何が一緒に売れているのかの分析や、今後の仕入れ計画に向けたデータとしての活用ができるのです。
そして、このPOSシステムを構成している要素に、バーコードがあります。バーコードは見たことないという人はいないですよね。いくつかの種類がありますが、一般的によく目にするのはJANコードというコードです。また、コードを読み取って商品価格を把握するための方式として、バーコード自体に価格情報が含まれておらずストアコントローラに登録されたマスタデータをシステムが参照することで把握するPLU方式(PriceLookUp)と、バーコード自体に価格情報を含めているNonPLU方式(Non Price Look Up)があります。
このほか、入出荷情報を企業間で電子的に交換するEDIなどを押さえておきましょう。

この科目のうち、生産管理は二次試験の事例Ⅲでモロに出題される重要箇所になりますし、覚えることや理解することもそれなりに多いので、早めに勉強に着手することをお薦めします😃

経営法務

この科目では、民法(特に相続に関する法規定)、会社法、知的財産権、について、ポイントを押さえるのが勝利への道です。

とりあえず、最初の時期は、テキストを粗く一周して、「だいたい、こんな内容を覚えたらいいんやな(^_^;)」という感触を押さえておけば良いと思います。丸暗記しないといけない項目が多いので、詳細は試験直前の1ヶ月くらいで覚え込む❗という手法を私はとりました。二次試験にはほぼ関係しないので、表現は悪いですが付け焼き刃で対応するという戦略もアリです❗

それぞれの重要ポイントは以下のとおりです。

民法(相続)
中小企業の経営者が親族に事業承継を行うにあたって、相続に関する法規定を知らないと、承継させたい特定の親族に事業用資産をうまく相続させられずに、次代の経営が混乱に陥るという事態になりかねません。
そのため、ここでは、基本知識としての法定相続分(配偶者と子どもが相続する場合は、配偶者1:子ども全員1の比率で相続 など)をまず押さえたうえで、除外合意(後継者が譲り受けた株式等を相続財産分割の計算から除外することを予め合意しておくことで後継者の権利の安定を図る制度)、固定合意(後継者が譲り受けた株式等の相続財産分割計算上の価格を予め固定する制度。その後株式価値が向上しても、固定された安い価格で相続財産分割が行われるため、後継者の権利安定につながる)、を是非とも押さえましょう。
会社法
ここでは、株式会社の機関の種類と、どのような場合に設置が必須となるかを覚えなければいけません。
株式譲渡制限のある会社とそうでない公開会社とで、さらにはそれぞれの中で大会社と大会社以外とで、それぞれどのような場合に取締役会の設置が必要になるのか、監査役監査役会の設置が必要になるのか、会計監査人会計参与は?といったことを押さえておくのですが、経験上、試験直前に暗記するのがお薦めです❗
このほか、株主総会での特別決議と普通決議事項や、会社合併や事業譲渡時の手続きなどについても、試験が差し迫ってきたら覚えるつもりで、心の片隅においておきましょう。
知的財産権
重要な知的財産権は、
  • 特許権
  • 実用新案権
  • 意匠権
  • 商標権
の4つです。存続期間や、権利が認められるための要件、出願公開の有無、無効審判制度の違い等が重要なポイントですが、これも、詳細を詰め込むのは試験直前で良いと思います。

とにかく暗記する項目の多い科目で、あまり早い時期に覚え込んでも、また忘れてしまうので、何を覚えないといけないのかというポイントを粗く押さえたら、細かい部分の暗記は後回しにして、他の科目の重要ポイントの理解に時間と労力を投入するのが良い戦略だと思います。

経営情報システム

この科目は、得意と不得意、好き嫌いが分かれる科目ですね。私はというと、不得意で苦手でした😅

上で述べた、経営法務は、細かい部分の暗記は後回しにしましたが、どういう意味を持った何を覚えるべきか、ということはすぐに理解できました。

一方で、情報システムに疎い私には、この科目は、「覚える前に、それ何なん?」という、手前で躓くタイプの項目が多かったんですよね。
ただ、自分でも賢明だったと思うのは、そのことに気づいて、計画的に早めに取りかかったことです。試験までまだ余裕のある時期に、精神的余裕をもって、一つずつ理解していくことによって、試験直前にはこの科目は大丈夫と思えるところまでもっていけました。

この科目の重要ポイントは、並列的でとても広くて多いのですが、その中でも特に重要なポイントを以下で挙げます。

ハードウェアとソフトウェア
まず、コンピュータ自体の理解です。
ハードウェアについては、コンピュータの五大装置として、入力装置、出力装置、記憶装置、演算装置、制御装置、があります。そして、演算装置と制御装置をまとめたものがCPUであること、記憶装置の分類としてROMRAMがあること、各装置を接続するインターフェイスの種類などを押さえておくべきでしょう。
ソフトウェアについては、オペレーティングシステムミドルウェアアプリケーションソフトウェアの機能や特徴を押さえ、画像データや音声データや動画データのデータ形式(画像データ形式のJPEGとか、音声データ形式のMP3など)の種類と違い、文字コードの種類と特徴などを押さえておきましょう。
データベース
さまざまなデータを蓄積し、それをうまく取り出して活用するために、データベースの知識が必要になります。
データの整理の仕方によって、いくつかに分類されるのですが、最重要はリレーショナルデータベースです。これは、行と列の2次元でデータを整理して格納していく方式で、エクセルをイメージしていただければ良いかと思います。
そして、このデータベースを操作するための言語としてSQLというものがあり、列を抽出したり行のデータの中から一定の条件に当てはまるものを検索して指定したりするための文法問題が頻出になっています。ルールさえ覚えてしまえばそれほど複雑ではないため、ここは押さえて得点源にしたいところです。
ネットワークとセキュリティ
ここは、私が最も苦戦したところです。論点の数が多いのと、アルファベットで表される用語で溢れている領域のため、なかなか頭に入りにくいキライがありました。
まずは、LAN、WANといったネットワークの種類と、接続機器としてのハブリピータブリッジルータの役割を押さえましょう。
次に、インターネットの接続のしくみとして、端末識別のためのIPアドレスの数字の意味や、これを制御するDNS(ドメインネームシステム)やDHCPといったしくみを覚えましょう。
暗号化方式も頻出論点です。共通鍵方式と公開鍵方式の違いは、頭の体操のような感じの話なので、それなりに興味深く学べるかと思います。
そして、セキュリティ対策としてのファイアウォールIDSの働きと弱点を押さえていきましょう。
プログラミング言語
ここは、暗記勝負です。試験直前期で良いので、瞬間記憶をフルに動員して覚えましょう。C言語、Java、C++、JavaScript、Perl、PHP、など、特徴や良く使われる用途などを覚えていきましょう。結構、言語の種類と特徴の組み合わせを理解しているかを問う設問が出題されます。
システム開発
ここでは、システムを構築する流れや開発手法について、代表的なものを一通り理解しておいて得点源にしましょう。
システム構築は、以下の流れで進められることが一般的です。
  1. 基本計画の策定(ユーザー要求を定義)
  2. 外部設計(ユーザー目線で必要な機能の設計)
  3. 内部設計(外部設計を元に開発者目線での設計)
  4. プログラミング
  5. テスト
そして、開発手法としては、
  • 上で述べた流れを順に進み後戻りしない前提で、工程ごとにユーザーから承認を得て進めるウォーターフォールモデル
  • 開発初期の段階から試作品をユーザーに示し、ユーザーからの改訂要求を踏まえて修正するということを繰り返して開発するプロトタイプモデル
  • システムをいくつかのサブシステムに分割して、サブシステム毎に小さなウォーターフォールモデルを素早く繰り返すことで開発するスパイラルモデル
などがあるほか、事前の定義や段階ごとのユーザーからの不可逆的な承認を重視せず、より軽量で小規模なシステム開発をユーザーとの協調を中心において迅速に開発するアジャイル開発が注目されてきています。

覚える用語がとにかく多いのと、アルファベットで構成される用語がほとんどであるため、一文字違いで意味もジャンルも全く違うというようなものもたくさんあって、「きちんと一つ一つ覚えよう」と真面目に取り組むと、心が折れてしまいます。
雰囲気で何度もテキストを読み、とにかく色々な問題を解くことで、不思議なことにアルファベット用語も見分けられるようになっていきます。
過去問をやり尽くしたら、他の資格の問題も使えます。私も、【ITパスポート】の問題集を古本屋で購入したりしました。

この科目は特に、複数のテキストや無料動画など、異なる視点からの説明を数パターン聞くことで、理解の隙間が少しずつ埋まっていく、というような進め方が良いのだと思います。

中小企業経営·中小企業政策

さて、いよいよ、一次試験最後の科目です。

この科目は、企業経営理論の勉強を少なくとも一通り終えてから着手することをお薦めします。
中小企業の経営の課題や大企業と比べた時の特徴を捉えていくことになるのですが、企業経営とは何か、というそもそもの事柄がある程度わかっていないと、効率良く習得できません。

あと、この科目は、過去問が使えません。出題される内容が、

  • 最新の中小企業経営の状況
  • 最新の中小企業政策

だからです。中小企業の傾向として、どの業種が多いかや、設備投資の動向や、全企業に占める企業数や雇用者数の割合などは、毎年変わっていくからです。
中小企業政策も同じく、補助金や各種優遇制度は年度毎にコロコロと変わりますので、これも数年前のデータを覚えても意味はありません。

唯一意味があるとすれば、どんな問題が出るかの傾向を把握するという点においてでしょう。

ここは、大手の予備校さんで、当年度の出題を予想した予想問題集を作成されているところもあるので、それを購入して何度も解く、というのが最も近道かと思います。

あるいは、中小企業白書を図書館で借りるなりしてざっと読めば、中小企業に何が求められているかといった中小企業庁の認識を感じることができますので、これも一つの有効な勉強法だと思います。

そんな中、確実に押さえておくべきなのは、

  • 【中小企業経営】企業数、従業員数、売上高といった主要指標における業種ランキングのトップ3位まで
  • 【中小企業政策】中小企業の定義、小企業の定義

です。
すべての科目を通じて、これほど簡単に覚えられて確実に得点に結び付く項目はありませんので、ここは絶対に押さえておきましょう❗

この科目は、とにかく最新年度の情報を踏まえたテキストと問題集をこなすのが大事です。

助成制度や補助金といった中小企業政策は、頭に入ってきにくいところはありますが、自分が中小企業診断士になって、実際に中小企業に助言して、補助金の申請をお手伝いするという局面を思い描きながら、半ば自分事と思いながら理解していくと、意外と覚えられたりします。

試験当日の心構え

さて、ここまで、科目毎のポイントや攻略法について、いろいろと書いてきましたが、試験当日の気持ちを強くするアドバイスもお伝えしたいと思います。

絶対に違う選択肢を消せば確率は上がる
一次試験は選択肢から正解を選ぶマークシート式ですから、「これが正解だ❗」という選択肢が見つけられなくても、「これは絶対に違う❗」というものが1つ2つ見つけられたら、相当に絞り込めるわけです。なので、正解が一発で見つからなくても、諦めずに、丁寧に各選択肢を読み込んで絶対に違うという選択肢を見つけ出して、少しでも正解の確率を上げる努力を淡々と続けた人が勝つ、ということを、是非、心に刻みつけて当日をこなしていただければと思います。
周りが賢そうに見えても気にしない
独学生は、試験当日まで、他の受験生に出会うことがありません。そして、当日に、何百人という受験生(=ライバル)と試験会場で出会うわけです。すると、そこには、
  • 見たこともないテキストやまとめペーパー(たぶんどこかの予備校のもの)を持って最終チェックに勤しむ人
  • 知り合い同士で談笑し励まし合う人
がいます。
ここで、何やら良くわからない焦りが生じてペースを乱されてしまうと、相手(誰⁉️)の思うツボです。
一次試験はライバルとの競争ではなく、ただ、目の前の問題に対して60点以上獲得できれば良いのです。そして、見たこともないまとめペーパーよりも絶対に信頼できる過去問をあなたはやり込んでいるのです。
何も心配は要りませんし、あせる必要もありません。

二次試験科目

パラダイムを変える❗

さて、ここからは、二次試験についてお話したいと思います。

二次試験は、一次試験とは全く異なる試験だと思って取り組んだ方が良いです。

確かに、知識の面では、一次試験から大幅な範囲の拡大があるわけではありません。

しかし、二次試験では、

  • 知識の深さ
  • 思考能力
  • 時間配分の技術

という、一次試験ではほとんど必要のなかったノウハウや技術が要求されるのです。

なので、勉強法も、テキストを読んで過去問をこなして知識を詰め込んでいく、というやり方から、限られた過去問の一つ一つと丁寧に向き合い、何が問われているのか事例企業の課題は何かその課題をどう解決したら良いのかを見抜き、それを指定文字数内で適切に表現して伝えていく方法を構築するという取り組み方に変えなければなりません。

取り組みかたが随分違いますし、余程の余裕がない限り一次試験前は一次試験対策に集中したくなりますから、二次試験対策が本格化するのはどうしても一次試験終了後ということになると思います。この、一次試験→二次試験の勉強の切り替えがとても重要です。最初は戸惑うかと思いますが、意識を変えるために、とりあえずどの年度の分でも良いので、1年分4事例を解いてみましょう。恐らく、できません。びっくりするほどに❗それで良いのです。まず気づく。そして、パラダイムを変えることが大切なのです。

もう一つ、二次試験が一次試験と大きく異なる点があります。正解がわからないということです。一次試験は正解が公表されるのに対して、二次試験は、正解も模範解答も全く公表されません。なので、多くの予備校さんや、合格者によるプロジェクト(ふぞろいな合格答案さんなど)では、受験生の再現答案を収集して、その合否結果から、どういった解答要素が正解とされたのかを逆算して類推するしかないという状況です。

受験生が過去問に取り組む際には、こうした方々が多くのデータと企業経営に関する知見を駆使して作成された解答例を指針にするしかないのですが、予備校さんの中でも、同じ設問に対して、全く異なる方向性の解答を示しているケースもあり、混乱は必至です。むしろ、そうした混乱は回避するのではなく、ありきと考えて、できるだけ多様な考え方に触れて多様な視点をもつようにし、それらのうちで自分が最も腹落ちする見解を自己判断で選択し、試験に臨む、という風に、覚悟を決めて割りきってしまった方が良いと思います。

(二次試験対策においては、練習問題不足に悩まされることになりがちです。そんな時のために、二次試験の練習問題もご参照ください。また、二次試験対策全般について、コチラもご参照ください。)

問題の解き方

二次試験では、与件文として事例企業の経緯や状況や経営者の想いなどが記載された文章があり、そのうえで、数問の設問が出題されます。設問では、概ね、事例企業の課題や問題点は何かという診断や、その対応策や解決策は何か、経営者の想いを実現するためにどのような戦略の方向性を持てば良いかといった助言を、所定の文字数内で解答することが求められます。

ここで、適切な解答をするためには、

  • 事例企業の強み、弱み、問題点、課題、経営者の哲学を把握する
  • 抱えている問題への対応策や直面している課題の解決策を、一次試験の知識を根拠に導きだす
  • それを、主語と述語、原因と結果を明確にしたわかりやすい文章で表現する

といった作業を、迅速に、漏れなくダブりなく行う必要があります。

そして、決してしてはいけないこととして、次の2つは超重要です❗

  • 設問要求からズレた解答はしない
  • 与件文に書かれていないことを勝手に創作しない

1点目については、「そんなヘマしませんよ(^-^;」と思われるかも知れませんが、結構やってしまいます
「理由は何か」と問われているのに、いろいろ考えた挙げ句、解決策を解答してしまう、というようなことが起こってしまうのです。気を抜くと…。なので、私は、「理由は何か」と問われたら、「理由は…」という書き出しで解答を作成するようにしていました。

2点目は本当にやってしまいがちです。特に自分の所属していたりよく知っていたりする業界に関する事例だと、与件文に書かれている事例企業の強みを無視して斬新な戦略の方向性を打ち出してみるとか、事例企業が強みを持っていないし持てそうにもないところを強化していくべきだと答えてみるとか、いわゆるポエム解答を生み出してしまう恐れがあります。
二次試験は、当たり前の解答を取りこぼさずにちゃんと書くことが求められる試験です。斬新なアイデアで他の受験生と差別化しようとするのは危険この上ない行為だという認識をしっかりもって、与件文に基づいた堅実な解答を心がけましょう❗

解き方の手法や順序はさまざまあるかと思いますが、私がやっていたのは、

  1. 与件文を読む(5分)
  2. 設問文を読み、何を聞かれているか(設問要求)と全体のテーマの雰囲気を把握(3分)
  3. 設問要求とテーマを意識しながら与件文をじっくり読む(10分程度)
  4. 各設問への解答下書きを作成(30分)
  5. 解答用紙に清書

というものです。(事例Ⅰ~Ⅲについてです。事例Ⅳは少し毛色が違いまして、後程述べようと思います。)これも、自分の中で何度も試行錯誤を繰り返す中で、試験当日時点でこれが一番しっくり来ていた、というだけのやり方で、別にこれがベストというわけでもありません。ただ、いろいろ試す中で、
まず与件文を一読してから設問文を読むのが全体のテーマを把握するうえで最も効率が良い
最初にいきなり与件文を熟読するよりも、設問文まで一読してテーマを把握してからの方が細部のもつ意味を漏らさずに把握しやすい
ということは言えるか、と思います。

一次試験と違って、二次試験では時間配分がとても大事です。知識と思考法がブラッシュアップされ、何とか過去問を解けるようになってきた段階で、時間内に解ききれないという壁にぶつかります。

試行錯誤しながら自分に合ったやり方を見つけていくのが結局は一番結果につながるので、自分だけの手法のブラッシュアップのプロセス自体を楽しんでいただくのが良いかと思います。その際に、上で述べた私の例が少しでも参考になれば嬉しい限りです。

では、全体の話はこれくらいにして、ここからは、それぞれの事例毎の攻略法について、私の経験を踏まえてご紹介いたします。

(ちなみに、私の再現答案はコチラ(再現答案)に、得点開示結果はコチラ(得点開示結果)に、まとめていますので、参考になれば幸いです。)

事例Ⅰ攻略法

事例Ⅰは、組織人事を中心とした経営戦略に関する問題です。

事例Ⅰにおける事例企業はA社として記述されていますので、以降、A社と表現しますが、A社の特徴や傾向として、次のような状態にあることが多いです。

  • かつてA社の成長を支えた主力事業が往時の勢いを失い、経営が傾いた時期を経て、経営革新を行い、新たな収益の柱を育てているところ。これを成就するために組織体制や人事制度の改革が求められている
  • 順調に成長してきたが、事業規模の拡大によって、これまでの組織体制や人事制度のままでは事業の展開に支障をきたすことが考えられるため組織体制や人事制度の改革が求められている

いずれにしても、組織体制や人事制度の改革が求められている状況に変わりはありませんよね。まあ、組織人事の事例なので、当然といえば当然ですが。

では、改革の方向性としてはどのような方向が望ましいのでしょうか。

まず、一つ目の、経営革新が求められる中での改革においては、これまでの事業で培ってきたものとは異なる発想や知識やノウハウや行動様式が求められることになります。その新しく必要な要素が何なのか、それを獲得していくためにどういった助言をすれば良いのか、については、与件文と設問文で明らかになっているA社の状況から類推していくしかない(時々、方向性すら明示されていることもあります)ですが、例としては、

  • これまでの決まった製品やサービスを売るだけの業務から、提案型の営業に変革する。そのために、Off-JTや人事評価指標の改正により必要な能力を獲得するとともに、組織内の横の情報共有を促進するような組織再編を行う
  • これまでの製品を売って終わりのビジネスから、ソフト面を充実させたサービスビジネスで競争力を確保するため、顧客志向の発想と行動に変革する。そのために、新たな行動様式を明示し、組織内での改善や情報共有を促進する
  • 状況変化に応じた多様な事業展開を実現するため、社員の創造的挑戦を奨励する組織風土に変革する。そのために、社内提案制度や目標管理制度を整備して社員の自主性とチャレンジ精神の向上を図る

といったことが多いかと思います。

そして、いずれ場合の課題解決策にも共通することは、経営トップが改革の方向を明示し、自ら率先して範を示すとともに、社員へのメッセージ発信と人事処遇によってこれを社内に浸透させていくことが重要だということです。

次に、事業規模拡大に伴う改革においては、事業規模と組織規模が相対的に小さかった時には問題にならなかった曖昧な管理体制や人事制度が、組織が拡大するにつれて最適なものではなくなるため、新たに最適な制度を構築しなければならないという状況です。

ここで、組織構造においては、機能別組織から事業部制組織に移行すべきかどうかや、組織内の部門構成の切り口(顧客別、技術別、地域別など)をどう変更するか、といったことを検討しなければなりません。ここでは、「これが正解❗」と言い切れるものはなく、A社の状況に応じて何が望ましかを判断し、解答に盛り込まなければならないのです。
ただし、組織構造毎のメリット·デメリットはしっかり押さえておかなければ、ロクな解答が作れませんので、一次試験知識をしっかり固定させておきましょう。

人事制度についても、同様に、A社の状況に応じて望ましい方向性は異なりますので、解答の方向性については一般論として一概には言えませんが、解答の前提となる知識として、

  • 成果主義のメリット(若手社員のモチベーション向上、人事評価制度の重要度向上による経営方針の浸透、人件費総額のコントロール等)·デメリット(評価制度の透明性と納得性の確保、高齢社員のモラール低下、社員の協力性低下等)
  • 自主性やチャレンジ精神を促進する人事施策(社内提案制度、目標管理制度、社内表彰制度等)
  • 社内の情報共有と協力体制促進のための人事施策(部門間の意見交換会、ジョブローテーション、部門横断プロジェクトチーム等)
  • 人材多様性(ダイバーシティ)のメリット(様々な価値観とノウハウの融合による新たなアイデアの創発等)

は押さえておきましょう。
なんとなくの傾向として、成果主義の導入や事業部制への移行を拙速に進めるA社長に対して、デメリットを意識して注意深く進めていくように助言するような視点が多いように思います。

その他のコツとして、以下のようなものがあるかと思います。

  • 事業を多角化する場合は、既存事業で培った強みが活かせる関連多角化が良い。
  • 基本は専門特化で強みを磨く差別化戦略
  • 最終問題で今後の戦略を問われたら、何はともあれA社長の想いを解答の軸に据える
  • 「何に留意すべきか」と問われてわからなければ小まめに状況把握し、修正を繰り返していく必要があると答える

事例Ⅰは、二次筆記試験の最初の科目ですので、この科目の手応えが悪い場合、下手をすると終日引きずってしまう恐れもありますので、幸先よくスタートを切るためにも、しっかりポイントを押さえて臨まれることをお薦めします。

事例Ⅱ攻略法

事例Ⅱは、マーケティングを中心とした経営戦略に関する問題です。

事例Ⅰと違って、数名規模の企業も事例企業になったりします。

事例Ⅱでは、事例企業はB社と表現されます。

B社には次のような特徴や傾向があります。

  • 強みとなる技術やノウハウや歴史といった経営資源を保有していたり、経営の低迷から抜け出すために新たな経営資源を新たに獲得しており、そこに価値を見出だしてくれる顧客層が一定数存在しているが、その顧客層に向けてうまく訴求できていない。
  • 以前から特定の地域で事業を行ってきたが、近年、同業の大手が低価格をウリに参入してきてB社の顧客の一部が奪われている。B社は新たなターゲットに向けて事業を見直す必要に迫られている。
  • 既存事業の売上が縮小してきたため、保有する資源を活用して新たな顧客層に向けた新規事業を展開する必要に迫られている。

こうした中で、B社のSWOT(強み、弱み、機会、脅威)等の環境をしっかりと把握し、B社の直面する事業環境の中で、B社が強みを持つ部分へのニーズがある顧客層(ターゲット層)を見つけ出し、そこに向けて製品やサービスをカスタマイズし、ターゲット層に向けてその魅力が伝わるように訴求していく、という活動に向けた助言をすることが求められます。

SWOT分析などの環境分析については、第1問で問われることが多いですが、与件文を丁寧に読めばだいたいは拾えるかと思います。
B社長がこだわりを持っているところが強みであることが多いですし、ライバルとなる大手が存在している場合は、そことの対比で弱みも見えてくることが多いと思います。
外部環境としての機会脅威については、顧客層の高齢化や地域の年齢別人口構成の変遷や、社会全体の嗜好の変化(健康志向、和の風情を求めるインバウンド顧客の増加等)などが解答要素として重要であることが多いです。

環境分析が適切に行えれば、誰をターゲットにすべきかが見えてきます。
ターゲットとすべき層もよく問われますが、次のような条件で与件文から抜き出せば良いかと思います。

  • 競合が十分にカバーしていないニーズを持っている層であること。
  • B社がそのニーズにマッチする強みを持っていること。
  • 既に十分な市場規模があるか、今後の成長が見込める市場であること。

丁寧に読めば与件文中にヒントがありますので、上のような条件を意識しながら抽出していただければと思います。また、ターゲット層を解答する際には、与件文の記載内容を踏襲しながら、デモグラフィックジオグラフィックサイコグラフィックの要素を含めて答えましょう。

製品やサービスのカスタマイズの方向性は、与件文又は設問文中で、「B社長は○○を●●にして売り出すことを考えている」等のように示されていることが多く、ターゲット層のニーズに合致するものであればそれがビンゴです❗

ターゲット層に製品サービスを訴求する方法については、状況により本当に様々ですが、方向性としては、次のことが言えるかと思います。

  • 状況の許す限り、テキストより画像、画像より動画、動画より参加と体験の機会を活用すべき。
  • 口コミを誘発できる場合は絶対に逃がさず解答要素に含める。

この他に、解答に使えるコツとしては、

  • 与件文に別業界の事業者が登場していたら、どこかの解答で、その事業者との連携を入れ込むことが得点につながる可能性が高い。
  • B社長が地域と連携したいとの意向を持っている旨の記述がある場合、将来に向けた内容の設問への解答になる可能性が高い。

あたりが言えるかと思います。

事例Ⅱは、身近な行きつけの飲食店とか美容室とかをイメージしやすいですよね。私も、自分のお聞き入りのラーメン屋が、競合他店の手をつけていないどのニーズに向けて何を特化して他店と差別化し、それをどうやってうまくアピールしていくか、といったことをよく勝手に考えてました。
皆さんも是非、想像を膨らませて楽しみながら解答作成プロセスをブラッシュアップしていっていただければと思います。

事例Ⅲ攻略法

事例Ⅲは、生産管理を中心とした経営戦略に関する問題です。

このため、事例ⅢのC社は、製造業です。大企業の下請けの場合もあれば、独立系の場合もあります。

事例Ⅲは、製造業に携わっていない方にとっては、取っつきにくい科目のように思われるかも知れませんが、実は、一番対策が容易な科目です。
なぜかというと、他の事例と比べて、最もパターンが少なく、また、C社の課題や経営方針が与件文にはっきりと書かれているためです。

C社の特徴や傾向は以下のとおりです。

  • 高い技術力に強みを持つ。コアな工程だけでなく、これまでの歴史的経緯から前後工程まで対応できる一貫生産体制を備えていることも多い。
    →第1問で強みと弱みを問われることが多く、これらの要素が解答になることが多い。
  • 生産計画の策定頻度(月次のみで週次を策定していない)、策定範囲(一部の工程しか対象にしていない)、策定にあたっての検討項目(工程毎の効率性を最優先してしまい納期が優先されていない)に不十分な点があり、納期管理に障害が生じている。
    →生産計画は高い頻度で、全工程を対象に、納期と生産効率の両方を重視して策定する。
  • ロットサイズが適正でない(大きすぎる)ために過剰な工程間在庫と後工程での待ちが生じている。
    ロットサイズは段取回数と工程間在庫の適正化の観点から最適化する。また、段取改善によりできる限り小ロット化する。
  • 生産現場において、熟練工頼みになっており技術にバラつきがある。
    →IE等により作業を標準化し、マニュアル化してOJT等によって現場への浸透を図る。
  • 現場の5Sが徹底できておらず、移動の支障になったり必要な資材を探すのに時間がかかったりする等、生産性低下の要因になっている。
    5Sを徹底する。
  • 設計部門、製造部門、営業部門の間での情報共有頻度が低いため、古い情報に基づく不適切な業務が発生している。
    各部門のシステムを統一し情報をリアルタイムで共有する体制を構築する。それが難しい事情があれば、高頻度で情報交換の場を設ける。

このように、キラリと光る強みを持ちながら、生産管理面や生産現場での作業効率性に問題を抱えているC社に対して、基本的にその問題点への対応策を助言する、というのが事例Ⅲのパターンです。
問題点は、与件文に露骨に書かれていることが多いです。ビックリするぐらいにモロに書かれていることもあります。そのような場合、上に青字で示したような問題解決策を、自信満々に直球で解答すれば良いです。

以上のように、事例Ⅲは、何がC社の課題で、解決策は何か、という解答要素は比較的容易に見抜けるのですが、どの問いに対してどの解答要素を答えるのか、という、解答の切り分けという難題があるという点は、他の事例にはない悩みどころです。
解答の切り分けについて、一つ言えることは、「生産管理面の~」と問われたら、生産計画又は生産統制(進捗管理、現品管理、余力管理)のことを答えるということです。「生産管理」とは生産計画と生産統制のことで、間違っても、段取改善とか、作業のマニュアル化とか、5Sの徹底とかを答えてはいけません❗
逆に、それ以外は、本当にどちらともとれる場合が結構あります。例えば、C社が5Sの徹底ができていなかったとして、第3問で納期遅れの解消策を問われ、第4問でムダな在庫の削減策を問われた場合に、どちらの解答に「5Sの徹底」を入れるべきかのように、確たる答えがなさそうに思えるケースがあるのです。
こうした場合は、とりあえず与件文と設問文から抽出できた解答要素をいずれかの解答に漏れなく盛り込むことに注力して、どの問いにどの要素、ということは気にしない、というのが現実的な解決策のように思えます。解答要素が網羅できていれば、少なくとも部分点は結構もらえるのではないでしょうか。

事例Ⅲは、試験当日は午後からの科目になります。事例Ⅰ~Ⅱの手応えがあった方はできるだけその勢いを保って、不安の残る感触だった方は昼食を切り替えのきっかけにして、心機一転取り組んでいただければと思います。この科目は、4科目のうち、最も勉強が得点につながる科目だと思いますので、得点源にするくらいの気持ちで臨んでいただければと思います。

事例Ⅳ攻略法

事例Ⅳは、財務会計を中心とする経営戦略に関する問題です。

この科目では、様々な業種業態のD社が登場します。

この科目は、苦手とする方も多いですが、4科目の中で対策の立て方自体は最もシンプルです。なので、計算問題を何度も練習して場数を踏むことが大切です。

これまでの3事例と異なり、D社には特定の特徴や傾向というものはなさそうですが、問われる事柄については、明確な傾向というか、もはやルールと言っても良いくらいのお決まりパターンがあります。

まず、これまでの3事例と比べると比較的短い与件文があり、D社の当期の財務諸表と、比較対照としての財務諸表(D社の前期財務諸表又は競合他社の財務諸表)が与えられます。

そして、第1問では、当期のD社の財務指標を比較対照の財務指標と比較して優れている指標と劣っている指標を合計3つ上げることが求められることがほぼ固定的です。また、多くの場合で、D社の財政状態や経営成績に関する特徴を問われる設問も出されますので、最初に答えた財務指標の優劣と一貫した内容の解答を書く必要があります。
財務指標の選び方については、諸説ありますが、オーソドックスな方法として、収益性安全性効率性、の3指標をそれぞれ1つずつ挙げるのが良いと思います。
それぞれの指標は、以下のとおりです。

  • 収益性指標
    • 売上高総利益率(売上総利益/売上高。高いほど優れている。)
    • 売上高営業利益率(営業利益/売上高。高いほど優れている。)
    • 売上高経常利益率(経常利益/売上高。高いほど優れている。)
  • 安全性指標
    • 当座比率(当座資産(現預金、受取手形、売掛金)/流動負債。高いほど安全で、100%以上であれば問題なし。)
    • 流動比率(流動資産/流動負債。高いほど安全で、100%以上であれば問題なし。)
    • 固定比率(固定資産/自己資本。低いほど安全で、100%以下であれば問題なし。)
    • 固定長期適合率(固定資産/(自己資本+固定負債)。低いほど安全で、100%以下であれば問題なし。)
    • 負債比率(負債/自己資本。低いほど安全。)
    • 自己資本比率(自己資本/総資産。高いほど安全。)
  • 効率性指標
    • 売上債権回転率(売上高/売上債権。高いほど効率的。)
    • 棚卸資産回転率(売上高/棚卸資産。高いほど効率的。)
    • 有形固定資産回転率(売上高/有形固定資産。高いほど効率的。)
    • 総資産回転率(売上高/総資産。高いほど効率的。)

これら以外にも財務指標は数多ありますが、試験対策上はこれだけ押さえておけば十分です。私は、試験開始後、与件文を一読したらとりあえず上の財務指標名称を問題用紙の余白部に書き出し、財務諸表の計数からD社の当期の指標と比較対照の指標を全て計算して計算結果の数値を並べて書き、その横に優劣の判定を「○」「×」で書く❗という作業をルーティンにしました。これは訓練すればかなり早くなります。
そのうえで極端な優劣の計数がないかどうかと、与件文にその要因を示す記述がないかどうかをチェックし、解答すべき財務指標を決めていました。(どうしても絞り込めない場合は、第2問以降で示されるD社の取組を参考にしていました。例えば、D社が損益の改善を図っているなら、収益性指標は「悪い」と考える等。)

ここで、与件文の状況と財務指標の関係について、以下の考え方が目安になるかと思います。

  • 製品サービスの競争力が高い(低い)=売上高総利益率が高い(低い)
  • 本社コストが高い(低い)=売上高営業利益率が低い(高い)
  • 金利負担が重い(軽い)=売上高経常利益率が低い(高い)
  • 特定の取引先への依存度が高い(低い)=当座比率や流動比率が低い(高い)※依存度合いが債権回収期間の交渉力に影響するため
  • 在庫が多い(少ない)=流動比率が低く(高く)、棚卸資産回転率が低い(高い)
  • 歴史が長く過去の事業が順調=自己資本比率が高い(利益留保が厚い)
  • 親会社の出資により設立=自己資本比率が高い(親会社の潤沢な資金力で安定)

もちろん、様々な例外はありますが、こうした視点で財務指標と与件文のD社の状況を吟味して、解答すべき項目を決めていただければ概ね妥当な選択になると思います。
最後の最後、どうしても絞り込めずに迷ったら、最も一般的と思われる売上高総利益率自己資本比率有形固定資産回転率、を解答する❗という技で乗り切ってください❗

第2問以降は、第1問ほど固定的な出題傾向ではないですが、第2問と第3問で以下のいずれかついての理解度が問われる傾向があります。

  • 費用の内訳として変動費と固定費が与えられ、これを基に損益分岐点分析を行う。
  • NPV(正味現在価値)回収期間法による投資評価を行う。
  • WACC(加重平均資本コストを求める。

これらについては、素直に問われることもあれば、複雑に絡み合わせたり、やたらと入り組んだ条件設定によって難題化したりする場合もあって、年度によって難易度が異なるような感触がありますが、問われている事柄の基本は概ね上のいずれかですので、これらの概念をしっかり理解したうえで、複雑な条件設定への耐性をつけるべく、練習問題を繰り返しましょう。ここは、ほぼ出題されることがわかっていますので、勉強の費用対効果はかなり高いと言えます❗

そして、第4問では、年度毎に様々なテーマで知識を問う問題が出題されています。連結会計、貢献利益、アウトソーシング又は内製化の財務的インパクト、デリバティブ取引など、多岐にわたりますが、基本的な概念を押さえていれば解答できるような問いが多いので、一次試験の知識を復習しておきましょう。

事例Ⅳは、上でも述べましたが、他の3科目と毛色が違いますので、時間配分の戦術も変えていました。私の採用していたやり方は、

  1. 与件文を読む(3分)
  2. 設問文を読み、D社の課題解決の方向性と、ヤバそうな設問がどれかを掴んでおく(2分)
  3. 第1問の財務指標計算と解答項目の決定(10分)
  4. 最初に目をつけたヤバそうな設問を後回しにしてそれ以外の設問を最後までやりきる(30分)
  5. ヤバい設問に取りかかる(25分)
  6. 見直しと検算(10分)

でした。
ヤバい設問のヤバさによって苦戦度合いは変わります。

筆記試験当日に向けて❗

一次試験を突破し、二次筆記試験に臨まれる日というのは、恐らく中小企業診断士への道程の中で最も気合いを入れる日になるのではないかと思います。当日までの努力の日々の成果を出し切るため、朝から気合いバリバリで試験会場に向かわれるのではないかと思いますが、力みすぎたり気負いすぎたりすると力を出し切れないのが世の常です。
ということも踏まえて、当日のメンタルとして大切なことは、自信を持つことと、楽しむことだと思います。

二次試験前日にでも、一度、二次試験対策を始めた頃の自分を思い出してみてください。驚ほどの飛躍を遂げたことに気づくのではないでしょうか❗
私はまさに試験前日に数ヶ月前の自分を思い出して、企業経営に対する理解も、ロジカルシンキングも、多面的な物の見方も、格段に向上した自分を感じて、軽い感動すら覚えましたよ。

当日は、独学生にとっては久々に他の受験生の存在を目にする日となります。一次試験同様に、いや、それ以上に、見たことのないペーパーや、たくさんの蛍光マーカーや、金属製のモノサシを用意してきている方々に出くわします。
しかし、前日に自分に感動できたあなたはきっと大丈夫です。

皆様の試験勉強ライフが充実した楽しいものになることを心より願っております😃

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